はじめに「遺族厚生年金が、5年で打ち切りになるらしい」最近、そんなニュースを見て不安になった、という声を相談でよくいただきます。とても不安を感じている方が多くいるように感じますが、ご安心ください。今すでに遺族年金を受け取っている方や、年配の方の多くは、今回の見直しの影響を受けません。むしろ知っておいてほしいのは、「自分には関係ない」と思っている、若い共働きのご夫婦のほうかもしれません。この記事では、次の3つを整理します。・今回の改正で「影響を受ける人」と「受けない人」は誰か・具体的に何がどう変わるのか(減る話だけではありません)・保険を考えるうえで、FPとして正直にお伝えしたい「順番」の話制度の話が続きますが、できるだけかみ砕いて書きます。ざっくりつかんでもらえれば十分です。まず安心してください。多くの人は今回の見直しの対象外ですニュースは「5年で終わる」という部分だけが強調されがちです。そのため、細かい中身を確認しないまま「私ももらえなくなるの?」と心配される方が少なくありません。ですが、今回の見直しで影響を受けない人は、はっきり決まっています。次の①~④に当てはまる方は、今回の改正の影響を受けません。影響を受けない人補足① すでに遺族厚生年金を受給している人これまでどおり終身で受け取れます② 60歳以降に受給権が発生する人5年の有期給付にはなりません③ 18歳年度末までの子を養育している間の人子育て期間中の給付は対象外です④ 2028年度に40歳以上になる女性当面の対象は40歳未満からのため遺族厚生年金に上乗せされる「中高齢寡婦加算」の廃止も決まりましたが、これも今すでに受けている方には影響しません。2028年4月以降に新しく対象になる人から、25年ほどかけて少しずつ縮小し、完全になくなるのは2053年度以降とされています。かなり先の、ゆるやかな話です。つまり、「今まさに受け取っている人」がいきなり打ち切られる、という改正ではありません。出所:厚生労働省「遺族年金制度の見直し」をもとに作成では「誰が」変わるのでしょうか影響を受けるのは、ざっくり言うと「子どものいない、60歳未満の若い配偶者」です。ここが原則、5年間の有期給付(=期間の決まった給付)に変わります。とはいえ、いきなり全員が対象になるわけではありません。急な変化を避けるため、当面は40歳未満から始め、そこから20年ほどかけて、対象になる年齢を段階的に引き上げていく予定です。もう一つ、大きな変化があります。これまで遺族厚生年金は、女性に手厚く、男性に厳しい制度でした。今回は「男女平等」の方向に見直され、これまで対象外だった55歳未満で妻を亡くした夫も、原則5年間の受給対象になります。対象は推計で年間およそ1万6,000人とされています。さらに、これまであった「年収850万円未満」という収入の条件も撤廃されます。収入が高いために遺族厚生年金をもらえない、というケースはなくなる見込みです。「減る」だけの改正ではありません「5年で打ち切り」という言葉のインパクトが強いので、悪い話に聞こえがちです。ですが、実際には手厚くなる部分もあります。ここを見落とすと、必要以上に不安になってしまいます。・5年間の給付には新たに「有期給付加算」が上乗せされ、金額はこれまでの遺族厚生年金の約1.3倍になる見込みです。・5年で終わったあとも、障害のある方や、収入が十分でない方は、増額された年金を引き続き受け取れます(継続給付)。今のところ、年収132万円(月およそ11万円)以下なら全額支給の方向です。・子どもがいる場合の加算(遺族基礎年金の子の加算)も引き上げられ、これまで抑えられていた3人目以降も、1人目・2人目と同じ額になる予定です(1人あたり年28万1,700円/2024年度価格。実際の額は2028年度の改定後に確定します)。・亡くなった配偶者が納めた厚生年金の記録を分けて、遺された側の年金に上乗せする「死亡分割」という仕組みも導入される予定です。ただし、継続給付の収入条件や死亡分割の中身は、まだ細かいところが公表されていません。施行までまだ1年以上あるので、詳細はこれから順に固まっていきます。この記事の数字も「現時点の見込み」として読んでいただければと思います。FPとして正直にお伝えしたい「順番」。ただし、その順番にも盲点がありますまず、公的な保障(遺族年金など)で、いくら受け取れそうかを把握する。そのうえで、足りない分だけを、収入保障保険や定期保険といった民間の保険で補う。こうすると、保険に入りすぎることも、逆に足りないまま放置することも防げます。私も基本はこの順番で考えます。ただ、今回の改正を見て、この「順番」にも一つ盲点があるな、と感じました。公的保障は「制度」です。制度は、今回のように、いわば国の判断ひとつで、わりと一気に中身が変わります。土台にしていたはずのものが、動くのです。一方、民間の生命保険は「契約」です。契約は原則、入ったときの条件が、あとから勝手に変わることはありません。そう考えると、「変わりうる公的保障を土台にして、足りない分だけ保険で埋める」だけが正解とは限りません。本当にここだけは守りたい、という部分は、動くかもしれない公的保障に頼りきらず、条件が変わりにくい「契約」のほうで先に押さえておく——そういう考え方もあっていいのかな、と思います。もちろん、これはあくまで考え方の一つです。公的保障がどれくらい手厚いか、ご家庭がどれくらいのリスクを取れるかによって、答えは変わります。子どものいない共働き夫婦へ。実は、ここが一番の当事者です今回の改正で一番影響が大きいのは、子どものいない若い共働き夫婦です。今の家計だけを見れば、お二人とも収入があって、お子さんがいなければ、遺族厚生年金が5年で終わっても、大きな痛手にならないご家庭も多いはずです。その意味では、死亡保障を手厚く持つ必要は、そこまで高くないかもしれません。ただ、一つだけ気にかけてほしいことがあります。今はお子さんがいなくても、これから考えている、というご夫婦です。生命保険は、若くて健康なうちに入るほど、保険料は安くなりますし、入りやすくもなります。将来お子さんを持つ可能性があるなら、「今は必要最小限」と割り切るより、少し多めに保障を持っておくほうが、結果的に得になることも少なくありません。ここも、正解はご家庭ごとに違います。だからこそ、まずは「我が家はいくら遺族年金を受け取れそうか」を知ることから始めるのがおすすめです。今日からできること制度を理解したら、次は「自分たちの場合」を確認する番です。難しいことはありません。✅「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で、厚生年金の加入状況を確認する✅万一のとき、我が家がいくら遺族年金を受け取れそうか、ざっくり把握する✅加入中の収入保障保険・定期保険の「保障額」と「期間」を見直す(公的保障とダブっていないか、逆に足りていないか)✅継続給付の収入条件や死亡分割など、これから固まる情報は厚生労働省の発表を追うまとめ・今すでに受け取っている人、年配の人の多くは、今回の見直しの影響を受けません。・影響を受けるのは、子どものいない60歳未満の若い配偶者。男性も対象に加わります。・「5年で打ち切り」だけでなく、加算で約1.3倍、継続給付、子の加算アップなど手厚くなる面もあります。・公的保障は「制度」なので変わりうる。守りたい部分を「契約」で押さえる考え方もある。・まずは、我が家の遺族年金額を知ることから。よくある質問Q. 今もらっている遺族年金も、5年で打ち切りになりますか?A. いいえ。すでに受給している方は今回の対象外で、これまでどおり受け取れます。Q. いつから変わりますか?A. 2028年4月からです。ただし当面の対象は40歳未満からで、そこから20年ほどかけて段階的に広がっていく予定です。Q. 夫も遺族厚生年金をもらえるようになるのですか?A. はい。男女差を解消する方向で、これまで対象外だった55歳未満で妻を亡くした夫も、原則5年間の受給対象になります。Q. 5年で終わったら、あとは何もないのですか?A. そうとは限りません。障害のある方や収入が少ない方は「継続給付」を受けられ、給付額も加算で約1.3倍になる見込みです。最後にここまで読んでいただき、ありがとうございました。「5年で打ち切り」という言葉だけが独り歩きすると、必要のない不安を抱えたり、逆に「自分は関係ない」と大事な見直しを見逃したりします。制度は、正しく知れば怖くありません。そして、知ったうえで我が家に当てはめると、意外と「やること」はシンプルだったりします。我が家の遺族年金はいくらか、今の保険は多いのか足りないのか——ここが気になった方は、一度整理してみると、ぐっと見通しがよくなると思います。具体的なところは、よかったら一度ご相談ください。参考・出典・厚生労働省「年金制度改正法(令和7年)」関連資料 https://www.mhlw.go.jp/・イオン銀行 タマルWeb「遺族年金改正でどう変わる?」 https://www.aeonbank.co.jp/column/pension/izokunenkin/kaisei/・au iDeCo「2028年4月から遺族年金が改正に」 https://ideco.kddi-am.com/learn/column/ideco0117/免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品の推奨や、個別の加入・見直しを勧めるものではありません。制度の内容・金額は2026年9月時点の見込みを含み、今後の政省令等で変わる可能性があります。実際のご判断にあたっては、最新の公式情報をあわせてご確認ください。