「うちって、平均と比べてどうなんだろう」。家計や将来のお金の相談をいただくと、この問いが根っこにあることがとても多いです。年収、教育費、住宅、退職金。ニュースやSNSで「平均◯◯万円」という数字を見るたびに、少し不安になったり、安心したり。私自身も、ついやってしまう気持ちはよくわかります。そこでこの記事では、2026年の後半時点で入手できる最新の公的データを使って、働き盛り・子育て世代(おおむね30〜40代)のお金の全体像を、一本の線でつないで整理してみました。年収(入ってくるお金)、教育費・住宅(出ていくお金)、退職金(将来受け取るお金)の順番です。先に、いちばん大事なことをお伝えしておきます。これから並べる数字は、あくまで「平均」です。あなたが取るべき戦略とは別物で、最後は個別の判断が必要になります。ここを取り違えると、他人の平均に自分の人生を合わせにいってしまう。そうならないための「地図」として読んでいただけたらと思います。この記事でわかること。・年収・教育費・住宅・退職金の、いまの全国的な水準(すべて調査年つき)・「平均」という数字にだまされないための見方・30〜40代が置かれている、お金の“構造”・そのうえで、今日からできる3つの整理そもそも「平均」に振り回されないでほしい各論に入る前に、どうしても先に置いておきたい前提があります。「平均」と「中央値」は違う、ということです。平均は、全員の数字を足して人数で割ったもの。ごく一部のお金持ちがいると、その人たちに引っ張られて、実感よりも高く出ます。一方の中央値は、全員を数字の順に並べたときの「ちょうど真ん中の人」。多くの方の実感に近いのは、こちらです。実際、厚生労働省の「国民生活基礎調査(2025年調査)」では、全世帯の平均所得が575万2千円なのに対し、中央値は451万円。そして平均を下回る世帯が61.5%もあります。つまり「平均以下」がむしろ多数派なんですね。だから、平均の数字を見て「うちは足りていない」と落ち込む必要はありません。見るべきは、平均ではなく、中央値と、そして何より“わが家の数字”です。この前提だけ、頭の片隅に置いて読み進めてください。出典:厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況」(所得は2024年の1年間)① 年収は今どのくらい?入ってくるお金から見ていきます。世帯主の年齢別に見た、1世帯あたりの平均所得です。世帯主の年代平均所得金額29歳以下364.3万円30〜39歳646.9万円40〜49歳761.8万円50〜59歳814.6万円(全世代で最高)60〜69歳617.0万円70歳以上405.0万円こうして並べると、年収のピークは50代で、30〜40代はまだ“上り坂”の途中だとわかります。ちなみに子どものいる世帯に限ると平均所得は857万3千円と高めに出ますが、これは共働きが増えていることが大きいと考えられます。注意点としては、この「所得」は税金や社会保険料を引く前の金額だということ。手取り(実際に使えるお金)はざっくり所得の7〜8割ほどなので、「年収575万円」と「手取り」を同じものとして考えないほうがいいです。また、こちらも平均値です。同じ調査での所得中央値は451万円でしたから、「50代で815万円もないと普通じゃないのか」なんて、思わなくて大丈夫です。② 教育費はこれからいくら出ていく?出ていくお金の代表格、教育費を見てみます。文部科学省「子供の学習費調査(令和5年度)」による、1年あたりの学習費総額です。区分公立(年間)私立(年間)幼稚園18.5万円34.7万円小学校36.7万円174.2万円中学校54.2万円156.0万円高校(全日制)59.7万円117.9万円この金額は、学校に払うお金だけではありません。学習塾や習い事の費用(学校外活動費)も含んだ総額です。「公立中学で年54万円」と聞くと高く感じるかもしれませんが、塾代込みの数字だと思ってください。これを幼稚園から高校卒業までの15年間で合計すると、すべて公立の場合で約614万円、すべて私立の場合で約1,969万円と、進路によって3倍以上の差がつきます。そして、ここに大学が乗ります。・国立大学:4年間で約242万円(入学料+授業料の標準額)・私立大学:4年間で約480万円(全学部平均。理系や医歯系はさらに高くなります)日本政策金融公庫の調査(令和3年度)では、高校入学から大学卒業までにかかる費用は、子ども1人あたり約942万円とされています。しかもこれは、下宿する場合の仕送り(自宅外通学で年間平均約96万円)は含まれていません。公庫の調査は2021年のもので、その後の学費・物価の上昇は反映されていない点はご留意ください。それでも、規模感をつかむには十分だと思います。正直、こうして数字を並べると気が遠くなりますよね。でも、教育費は「いつ・いくら」がかなり読める費用でもあります。子どもの年齢から逆算すれば、山が来る時期は先に見えている。だからこそ、事前の準備が効きます。③ 家は今いくらになっている?ここ数年、「家が高くなった」という声を本当によく聞きます。データでも、それははっきり出ています。国土交通省の「令和8年(2026年)地価公示」によると、全国の地価は5年連続で上昇。住宅地は前年比プラス2.1%、商業地はプラス4.3%でした。ただ、この「上がっている」を、もう少し丁寧に見てみたいんです。国土交通省の「不動産価格指数(2025年12月時点)」を、2010年を100として見てみます。種類指数(2010年=100)マンション225.1戸建住宅121.9住宅地(土地)119.8突出して上がっているのはマンション(約2.25倍)で、戸建や土地はそこまでではありません。「住宅高騰」と一言で言われがちですが、実態は「マンション、とりわけ新築マンションの高騰」なんですね。実際の金額感も見ておきましょう。住宅金融支援機構「フラット35利用者調査(2024年度)」の、物件取得にかかった全国平均額です。区分所要資金(全国平均)新築マンション5,592万円土地付き注文住宅5,007万円注文住宅(建物のみ)3,936万円建売住宅3,826万円中古マンション3,033万円中古戸建2,573万円新築マンションの5,592万円は、たしかにインパクトがあります。ただ、これは「フラット35を使った人」に限った平均なので、全国の相場そのものではない点には注意してください。それでも、中古や戸建まで含めれば、選択肢の幅はまだあるということも、この表は教えてくれます。④ 退職金は将来いくら受け取れる?将来受け取るお金、退職金はどうでしょうか。厚生労働省「就労条件総合調査(令和5年)」から、定年退職時の平均退職給付額を見てみます。区分平均退職給付額大学・大学院卒1,896万円高校卒(事務・技術職)1,682万円高校卒(現業職)1,183万円「なんだ、2,000万円近くもらえるなら安心じゃないか」。そう感じた方こそ、ここは丁寧に読んでいただきたいところです。この数字には、大きな前提が3つあります。・退職金制度がある企業に限った平均です。そして、その制度がある企業は全体の74.9%。5年前(80.5%)より減っています。制度がない会社に勤めていれば、そもそも退職金はありません。・退職一時金と企業年金を合算した額です。まとまった現金がそのまま振り込まれる、とは限りません。・大卒の平均額は、5年前より約87万円下がっています。じわじわと縮んでいるんですね。ちなみに、中小企業(東京都・従業員10〜299人)のモデル退職金は、大卒で約1,150万円。全国平均(全規模込み)の1,896万円とは、ずいぶん差があります。会社の規模で、受け取れる額は大きく変わります。なお、「業種別の退職金相場」はよく検索されますが、実は公的な統計では業種別の平均がきれいには取れません。断定的な業種別ランキングを見かけたら、その出典と対象(大企業限定かどうか等)を一度確かめることをおすすめします。4つのデータを一本の線でつなぐとここまでの数字を、30〜40代の目線で並べ直してみます。・年収は、まだ上り坂の途中(ピークは50代)・なのに、教育費と住宅ローンが、ちょうど同時にのしかかる時期・実際、統計上も30〜40代は「貯蓄より借入(負債)が上回る、ほぼ唯一の世代」です。総務省の家計調査(2025年)では、40歳未満の平均貯蓄994万円に対し負債は1,882万円、40代も貯蓄1,381万円に対し負債1,483万円と、負債が勝っています。・そして、老後の受け皿だったはずの退職金は、制度のある会社自体が減り、額も縮んでいる。私が最近つよく感じているのは、社会全体が「生活者任せ」に傾いている、ということです。かつて会社が用意してくれた退職金や企業年金も、いまはDC(確定拠出年金=自分で運用する年金)へと移りつつあります。企業型DCの加入者は約860万人(2025年3月末)と、10年弱で約1.5倍に。一方で、受け取る額が約束されるタイプ(確定給付型)は減っています。公的な保障も、正直、現役世代にとっては実感が薄い。これは良い悪いの話というより、「自分で管理し、自分で備える」必要性が、静かに増しているということだと思っています。だからこそ、他人の平均に一喜一憂している場合ではなくて、わが家の数字と時間割で考える。この記事で伝えたいことは、突き詰めるとそこに尽きます。今日からできる3つの整理大きな数字を見た後は、手を動かせる小さな一歩に落とすのがおすすめです。・✅ 「平均」ではなく「中央値」と“わが家の数字”で考える。ニュースの平均年収に、自分を合わせにいかない。・✅ 教育費と住宅ローンが重なる時期を、先にカレンダーにする。子どもの年齢から、山が来る年はもう見えています。見えれば、備えられます。・✅ 「もらえる前提」を一度外す。退職金・年金をアテにしきらず、自分で積み立てる“箱”を一つ決めて動かす(NISAやiDeCoといった制度は、その入れ物の候補です。どれが向くかは人によります)。まとめ・並べた数字は、あくまで平均。あなたの戦略とは別物で、個別の判断が必要です。・見るべきは平均より中央値、そして“わが家の数字”。・30〜40代は「年収は上り坂、でも教育費と住宅が重なり、貯蓄より負債が上回る」構造の中にいます。・退職金・年金は縮小・自助化の流れ。だからこそ、自分で備える設計が要ります。よくある質問(FAQ)Q. 「平均」と「中央値」、結局どっちを見ればいいですか?A. 実感に近いのは中央値です。平均は一部の高所得・高資産層に引っ張られて高く出ます。ただ、いちばん大事なのはどちらでもなく、「わが家の数字」です。他人の代表値は、あくまで地図の縮尺だと思ってください。Q. 教育費は、結局いくら用意すればいいですか?A. 進路で大きく変わります(全公立か全私立かで、高校までだけでも3倍以上の差)。まずは「大学まで全部いくらか」の総額より、「何歳のときに、いくら必要か」を時間割にするのが先です。山の位置がわかれば、準備の仕方が決まります。Q. 退職金って、本当にもらえなくなるんですか?A. ゼロになるという話ではありません。ただ、制度のある会社が減り、平均額も下がり、受け取り方も「自分で運用するDC型」へ移りつつあるのは事実です。「必ず◯◯万円もらえる」を前提に老後設計をしない、という姿勢が現実的だと思います。Q. 家は、買うべきですか?A. これは本当に人それぞれで、一概に「買うべき/やめるべき」とは言えません。実際に住むための家(実需)と、投資としての不動産では、考え方もまったく違います。金利や価格の動きも気になるところですが、大切なのは平均相場ではなく、ご自身の収入・家族計画・働き方に合っているか。ここは一般論で決めず、個別に整理するのが賢明だと思います。最後に長くなりましたが、いちばんお伝えしたかったのは、冒頭と同じことです。平均は、あなたの答えではありません。数字は、自分の現在地を確かめる地図としては役に立ちます。でも、そこからどう歩くかは、家族構成も、収入も、価値観も違う一人ひとりで変わります。「うちの場合はどうなんだろう」と気になったら、具体的なところは一度ご相談ください。数字を、あなたのための地図に描き直すお手伝いができればと思っています。参考・出典・厚生労働省「2025年 国民生活基礎調査の概況」・文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」・日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」・文部科学省「私立大学等入学者に係る学生納付金等調査(令和7年度)」/国立大学の授業料標準額・国土交通省「令和8年地価公示」/「不動産価格指数(2025年12月分)」・住宅金融支援機構「2024年度 フラット35利用者調査」・厚生労働省「令和5年 就労条件総合調査」・東京都「令和6年 中小企業の賃金・退職金事情」・総務省「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年平均」・金融経済教育推進機構「家計の金融行動に関する世論調査 2025」・厚生労働省/運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計資料(2025年3月末)」免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・投資・借入を推奨するものではありません。掲載した統計はいずれも過去の調査結果であり、将来の数値や成果を保証するものではありません。実際の判断にあたっては、ご自身の状況に応じてご相談ください。