はじめに「金利が上がったみたいだけど、うちの家計、結局トクなんですか?ソンなんですか?」最近、こういうご質問をよくいただきます。結論から言うと、金利の上昇は、家計にとって「一方向」の話ではありません。お金を「借りている人」と、お金を「置いておく(貯める・遺す)人」とで、影響がちょうど真逆に出ます。この記事では、2026年に起きている金利上昇が、・住宅ローンをどう動かすのか(借りる側)・預金・国債・保険といった円の資産をどう変えたのか(置いておく側)の2つに分けて整理していきます。そのうえで、私自身が相談の場で実際にどう考え、どうお答えしているかも、正直にお伝えします。少し長くなりますが、順番に読んでいただければ、ご自身の家計でどこを見ればいいかがはっきりするはずです。そもそも「金利」は一つではありません話がこんがらがる一番の原因は、ニュースで言う「金利」が、実は2種類あることです。ここだけ先に分けておきます。① 政策金利(=短期金利)日本銀行が決める金利です。2026年6月に、それまでの0.75%程度から1.0%程度へ引き上げられました。銀行どうしがごく短い期間でお金を貸し借りするときの金利の土台になります。② 長期金利(=10年国債の利回り)こちらは日銀が直接決めるのではなく、市場(みんなの売り買い)で決まる金利です。2026年8月には一時2.9%台まで上がり、約30年ぶり(1996年9月以来)の高さになりました。ざっくり言うと、①はコントロールされている金利、②は市場が「これから金利はもっと上がりそう」という見通しを反映して動く金利、というイメージです。この2つが、あとで出てくる「変動金利」と「固定金利」に、それぞれ効いてきます。ここだけ頭の隅に置いておいてください。【借りる人へ】住宅ローンの金利は、どうやって決まっているのか住宅ローンを選ぶとき、多くの方が「変動か、固定か」で悩みます。でもその前に、そもそもこの2つが何に連動しているのかを知っておくと、話が一気に分かりやすくなります。変動金利は「政策金利(短期)」に連動します変動金利は、銀行の「短期プライムレート」という金利をもとに決まります。この短期プライムレートは、先ほどの①政策金利の動きにほぼ連動します。つまり、日銀が利上げをすると、変動金利も上がりやすい、という関係です。実際、2026年に入って政策金利が上がったことで、変動金利もじわじわ上がってきています。固定金利は「長期金利(10年国債)」に連動します一方、固定金利(全期間固定やフラット35など)は、②の長期金利の動きに影響を受けます。長期金利は市場で決まり、しかも「これから金利はどうなりそうか」という将来の見通しを先に織り込んで動きます。だから、変動金利がまだそれほど上がっていなくても、固定金利のほうが先に、大きく動くことがあります。同じ時期でも、銀行ごとに金利が違うのはなぜ?「A銀行とB銀行で、なんでこんなに金利が違うの?」と聞かれることもよくあります。これは、各銀行が「基準となる金利」に、独自の優遇幅(割引)を乗せて商品を作っているからです。集客したい銀行ほど優遇幅を大きくしますし、審査(年収・勤務先・借入額・自己資金など)によっても引かれる幅は変わります。なので、住宅ローンは「表面の金利」だけでなく、自分に適用される優遇後の金利で比べる必要があります。ここは面倒でも、複数の金融機関で見積もりを取る価値があります。実際の推移を、一枚の図で見てみましょう言葉だけだと分かりにくいので、この10年ほどの金利の動きをまとめてみました。見ていただきたいのは、次の3点です。・2022年ごろまでは、ほぼ横ばいでした。政策金利はマイナス、変動金利も低いまま。「金利のない世界」がずっと続いていたわけです。・ところが2024年あたりから、一斉に上を向いています。特に、長期金利(10年国債)と、それに連動する固定金利(フラット35)の上がり方が急です。・青系(政策金利・短プラ・変動)と、赤系(長期金利・固定)で、動き方が違うのが分かります。変動が連動する短期側はゆるやかに、固定が連動する長期側は先に大きく、という差が出ています。この「赤系(固定側)のほうが先に大きく動く」というのが、次の話につながります。これから固定金利はどうなる?長期金利上昇の影響先ほど、固定金利は長期金利に連動する、とお伝えしました。その長期金利が、2026年に約30年ぶりの水準まで上がっています。将来の金利見通しを反映して動く長期金利がこれだけ上がっているということは、固定金利は今後さらに上がっていく可能性がある、ということです。ここで、多くの方が「じゃあ今のうちに固定にしないと」と焦ります。その気持ちはとても分かります。ただ、私は「金利が上がったから固定が正解」とは、単純には考えていません。次の章で、その理由をお話しします。金利が上がった今、住宅ローンをどう構えるかここからは、私自身の考えです。正解・不正解が一つに決まる話ではないので、「一人のFPはこう考えている」という参考として読んでください。私は今も、ご相談に対しては変動金利でお答えすることが多いです。理由は、金利が上がったとはいえ、変動金利の水準は、長い目で見た株式投資の平均的な利回りには、まだ届いていないからです。つまり、変動を選んで月々の返済で浮いたお金を、コツコツ運用に回すことを前提にすれば、将来的なメリットは取りやすい、と考えています。もちろん、これは「浮いたお金をちゃんと運用に回す」ことがセットの話です。浮いた分を使ってしまうなら、この理屈は成り立ちません。そして、変動金利の一番のリスクは「これから金利がさらに上がること」です。そのリスクをやわらげたいなら、日本株に一部投資しておくというのも、選択肢としてはありかなと思っています。金利が上がる局面では、企業の業績や株価にプラスに働く場面もあるからです(もちろん、株価が必ず上がるわけではありません)。念のためお伝えすると、これは「変動が絶対に得」という話ではありません。・収入が安定していて、金利が上がっても返せる余力があるか・浮いたお金を、実際に運用に回せるか・金利上昇のストレスに、精神的に耐えられるかこのあたりを正直に見て、「自分は固定のほうが安心して眠れる」という方なら、固定を選ぶのも十分に合理的です。今日、確認しておきたいこと✅ 自分のローンが「変動」か「固定」か、今の適用金利は何%か✅ 変動なら、金利が1〜2%上がったとき、返済額がいくらになるか試算する✅ 変動で浮いている分を、貯蓄・運用に回せているか✅ 借り換えを考えるなら、優遇後の金利と諸費用まで含めて比較する【貯める・遺す人へ】円で持つ意味が戻ってきたここまでは「借りる側」の話でした。ここからは逆に、お金を「置いておく側」の話です。長らく日本は「預金に置いても、ほとんど増えない」時代が続いていました。それが金利上昇で、円のまま持つ資産の利回りが、一斉に上がってきています。・普通預金:メガバンク3行が2026年8月から0.4%に(それまでは0.3%)・定期預金(1年):おおむね0.4%前後、条件によっては0.5%程度・個人向け国債:2026年8月募集分で、変動10年が1.87%、固定5年が2.06%数年前まで、預金金利は0.001%といった世界でした。それと比べると、円で持つことの意味が、確かに戻ってきています。ただし「昔の低い金利の債券」を持っている人は注意ここで一つ、大事な注意点があります。金利が上がると、すでに発行されている(昔の低い金利の)債券の価格は下がります。金利と債券価格は、シーソーのように逆に動くからです。なので、市場で売買するタイプの債券や、債券に投資する投資信託、外国債券などを持っている方は、金利がさらに上がると値下がりする可能性がある点に注意してください。一方で、個人向け国債は例外です。個人向け国債は、中途換金しても国が元本を保証してくれるので、金利が上がっても「売ったら元本割れ」という心配がありません(財務省)。同じ「国債」でも、市場で売買する国債と、個人向け国債では性格がまったく違う、ということです。ここは混同されやすいので、あえて分けてお伝えしました。相続を考える人にとっての円建て一時払い保険金利上昇の影響で、私が「これは大きいな」と感じているのが、円建ての一時払い保険です。特に、相続を考えている方にとって、有効性がかなり高まってきました。なぜ有効性が高まったのか一時払い保険というのは、たとえば「まとまったお金を最初に一括で払い込み、その分の死亡保険金を確保する」タイプの保険です。大事なのは、払い込んだ金額よりも、受け取れる死亡保険金のほうが大きくなるという点です。そして、この「払った額」と「受け取れる保険金」の差は、保険の予定利率が高いほど、大きく開きます。その予定利率が、金利上昇を背景に上がってきました。実際、2026年7月からは一部の大手生保が予定利率を1.75%から2.25%へ引き上げています。これはつまり、同じ保険料でも、確保できる死亡保険金が増える、あるいは同じ保険金なら保険料が下がる、ということです。低金利の時代は、この差がごくわずかで、正直「わざわざ保険で持つ意味は薄いな」と感じる場面も多かったのですが、今はその効きが明確に良くなっています。※どのくらいの倍率になるかは、被保険者の年齢・性別・健康状態で大きく変わります。「払った額の何倍になる」と一律に言えるものではないので、あくまで「予定利率が上がると、その差が広がる」という仕組みとして理解してください。相続で効いてくる「500万円の非課税枠」もう一つ、相続で保険が使われる大きな理由が、死亡保険金の非課税枠です。死亡保険金には、「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があります。たとえば相続人が3人なら、1,500万円までは相続税がかからずに渡せる、という計算です。現金や預金のまま遺すと、この枠は使えません。同じお金でも、保険という形にしておくことで、遺す側・受け取る側の負担を軽くできる可能性がある、ということです。さらに、日本より高い外国の金利を活かした保険もあり、こうした選択肢の使いどころが、以前より広がっています。それでも「利率だけで飛びつかない」ここまで良い面をお伝えしましたが、私は良いことだけをお伝えして終わりにはしたくありません。一時払い保険を考えるなら、少なくとも次の点はセットで確認してください。・予定利率=あなたの受け取り利回り、ではない:予定利率は保険会社側の計算に使う数字で、実際に手元に残る利回り(実質的な利回り)とは別物です。・途中で引き出せるか:一時払い保険は、まとまったお金を長く預ける前提の商品です。急にお金が必要になったとき、途中で解約すると元本割れすることもあります。・その資金は、本当に「遺す用」か:老後の生活費として使う予定のお金まで保険に入れてしまうと、いざというときに動かせません。相続税の具体的な試算になると税理士の領域に入る場面もありますが、「そもそも我が家で保険を使う意味があるのか」という全体の設計は、まずFPと整理するのがおすすめです。まとめ金利上昇は、家計にとってプラスにもマイナスにもなります。ポイントを短くおさらいします。・金利には「政策金利(短期)」と「長期金利(10年国債)」の2種類がある・住宅ローンは、変動=政策金利、固定=長期金利に連動する・長期金利が30年ぶりの水準まで上がり、固定金利は今後さらに上がる可能性がある・私自身は、変動+浮いたお金を運用、という考え方を軸にしている(ただし人による)・円の資産(預金・国債・保険)は一斉に高利回り化。ただし昔の低金利の債券は値下がりに注意(個人向け国債は元本保証で例外)・相続を考えるなら、円建て一時払い保険の有効性が高まっている。ただし利率だけで判断しないよくある質問(FAQ)Q. 変動金利と固定金利、結局どちらがいいですか?A. 一律の正解はありません。金利が上がっても返せる余力があり、浮いたお金を運用に回せる方は変動、金利上昇の不安なく過ごしたい方は固定が向きます。ご自身の家計と性格の両面で考えるのがおすすめです。Q. これから住宅ローンの固定金利は上がりますか?A. 固定金利が連動する長期金利が、2026年に約30年ぶりの水準まで上がっています。将来の見通しを反映して動く金利なので、固定金利も今後さらに上がる可能性があります。ただし市場次第なので、断定はできません。Q. 預金金利が上がったなら、投資はしなくていいですか?A. 預金金利は上がりましたが、物価の上昇(インフレ)に負けない水準かは別の話です。「増やす」目的のお金と「守る」目的のお金を分けて、置き場所を考えるのがよいと思います。Q. 相続対策なら、一時払い保険に入れば安心ですか?A. 有効な選択肢が増えたのは確かですが、「入れば安心」とは言い切れません。途中で引き出せない資金であることや、実質的な利回り、ご家族の状況を踏まえて、全体で判断する必要があります。最後にここまで読んでいただき、ありがとうございます。金利の話は、どうしても「上がった・下がった」のニュースだけが独り歩きしがちです。でも本当に大事なのは、その動きがご自身の家計のどこに、どう効くのかを、借りる側・置いておく側の両面で整理することだと思っています。「うちの場合はどっちの影響が大きいんだろう」と気になった方は、一度ご相談ください。ご家庭の状況を伺いながら、一緒に整理していきます。参考・出典・日本経済新聞「長期金利上昇、一時2.945% 財政懸念や日銀利上げ観測で」・三菱総合研究所「日銀金融政策決定会合(2026年6月)政策金利1.0%へ引き上げ」・財務省「個人向け国債」中途換金に関する説明・資産12「個人向け国債の金利・発行額推移(2026年8月募集)」・SBI新生銀行/リクルート「住宅ローン金利の決まり方・短期プライムレート」解説・各生命保険会社の一時払い終身保険 予定利率改定に関する公表資料(2026年)・推移グラフの数値:ダイヤモンド不動産研究所、日本銀行、財務省、日本経済新聞ほか(各年の代表値、2026年は8月時点)免責本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・契約を推奨するものではありません。記載の金利・利率・数値は執筆時点(2026年8月末)のものであり、将来の水準や運用成果を保証するものではありません。実際のご判断にあたっては、最新の情報とご自身の状況をご確認ください。