はじめに2027年1月から、「こどもNISA(正式には、こども支援NISA)」という新しい制度が始まる予定です。このニュースが出てから、こんな声をよく聞くようになりました。「学資保険って増えないですよね。だったらNISAの方がいいと思うんですけど、どうですか?」とても自然な疑問だと思います。ただ、私はこの「こどもNISA vs 学資保険、どっちが得か」という比べ方そのものに、少し違和感を持っています。結論から言うと、この2つは、そもそも同じ土俵で戦わせるものではないんです。この記事では、なぜ比べること自体がズレやすいのか、そして実際どうすればいいのか、3つのチェックポイントを解説していきます。「学資 vs NISA」——この対決はそもそもズレているさきほどの「学資保険は増えないからNISAの方がいい」という質問。これをよく聞いてみると、実は2つのまったく別の願いが、ひとつに混ざっています。ひとつは「万が一のときも、子どもの教育費を守りたい」という気持ち。もうひとつは「教育費の価値を、減らしたくない」という気持ち。前者は「保障を持ちたい」という話で、後者は「運用したい」という話です。この2つは、目的が違います。「保障を持ちたい」と「運用したい」を対決させるのは、たとえるなら「傘」と「日焼け止め」を並べて「どっちが優秀か」を決めようとするようなものです。守りたいものが違うので、勝ち負けをつけても意味がないんですね。だから私は、比べる前に、まず「自分は何のためのお金を用意したいのか」を分けて考えることをおすすめしています。教育費の準備に必要な「3つの要素」で考える比べる前に、私はいつも「教育費を用意するのに必要な要素」を3つに分けて整理します。大きく、次の3つです。① 計画性決まった時期に向けて、コツコツ確実にお金を積み立てていく力です。② 保障性家計の収入の柱の方に万が一のことがあっても、予定していた教育費を用意してあげられる、という力です。(学資保険なら、その後の保険料の払い込みが免除される、といった形で実現します。)③ 収益性支払いまでに時間があるなら、その間の物価の上昇などによる「お金の価値の目減り」を防ぎ、できればより大きな教育費を用意する、という力です。大事なのは、手段によって、この3つの「満たし具合」が違う、ということです。ざっくり整理すると、こんなイメージです。・学資保険……計画〇 / 保障〇 / 収益△・NISAなどの運用……計画〇 / 保障× / 収益〇見てのとおり、いちばんの違いは②保障性です。「親に万が一のことがあっても教育費が用意される」という機能は、NISA(こどもNISAを含みます)にはありません。ここが、2つを同じ土俵で比べられない、いちばんの理由です。あなたにとって、優先順位が高いのはどれですかでは、この3つのうち、あなたにとって何がいちばん大事でしょうか。これはご家庭によって答えが変わります。ただ、私が実際にこの話をすると、②の保障性を「これが一番大事です」とおっしゃる方が、圧倒的に多いです。「自分に何かあっても、この子には希望する進路に進んでほしい」そう考える親御さんが、やはり多いんですね。もし②保障性が最優先だと決まったなら、次に確認することは、実はNISAか学資保険か、ではありません。確認するのは、次の3点です。・今、加入している保険(や貯蓄)で、万が一のときの教育費は足りるのか・遺族年金などの公的な保障を含めて考えると、どのくらい足りないのか・そのお金の管理方法(置き場所)は、これで問題ないかここまで整理して、はじめて「では、その不足をどの手段で埋めるか」という話になります。順番が逆になって、いきなり「NISAか学資保険か」から入ってしまうと、道に迷いやすいんです。こどもNISAは「悪い制度」ではありません。ただ、注意点がありますここまで読むと「NISAを否定しているのかな」と感じた方がいらっしゃるかもしれませんが、もちろんそうではありません。NISA自体は、とても良い制度だと思っています。こどもNISAも、内容次第で有力な選択肢になり得ます。参考までに、現時点でわかっている、こどもNISA(こども支援NISA)の要点を整理しておきます。・2027年1月から始まる「予定」(0〜17歳が対象)・年間の投資上限は60万円、生涯で最大600万円まで非課税・投資できるのは、つみたて投資枠の対象商品(一定の条件を満たした投資信託など)・12歳以降は、一定の条件のもとで引き出しにも対応する見込みただし、口座開設の受付時期や対応する金融機関など、細かい部分は2026年中に順次発表される予定で、まだ確定していない点もあります。そのうえで、私がひとつだけ気をつけてほしいと思っているのが、名前による思い込みです。「こども」NISAだから、これは「こども」のもの、だから教育費はこれで、という連想です。ここは一度立ち止まってほしいところです。というのも、教育費は、親名義のNISA(通常のつみたて投資枠)で積み立てても、まったく問題ないからです。「こども」という名前がついているから教育費に使わなければ、ということはありません。むしろ、家計全体で見たときに、親名義の枠のほうが管理しやすい、というご家庭も多いです。名前のイメージで手段を先に決めず、あくまで「目的に合うか」で選んでいただきたいなと思います。今日からできる、教育費の整理チェックリスト「まず何をすればいいか」を、順番にしました。✅ そのお金は「守り(絶対に必要)」なのか「攻め(増やしたい)」なのか、性質を分ける✅ 教育費の準備に必要な3つの要素(①計画性②保障性③収益性)のうち、わが家で優先したいものを決める✅ ②保障性を重視するなら、今の保障額・公的保障で足りているかを確認する✅ ③収益性(増やす)を担わせる部分は、使う時期までの「時間の長さ」で無理のない配分にする✅ 「NISA」「学資」という商品名から入らず、「何のためのお金か」から逆算するまとめ最後に、要点を短く振り返ります。・「こどもNISA vs 学資保険」は、そもそも同じ土俵で比べる話ではない・「保障を持ちたい」と「運用したい」は、別の目的・教育費の準備に必要な3要素(①計画性②保障性③収益性)で、優先順位を整理する・NISAが担えるのは主に①と③。②保障性は担えない・こどもNISAは良い制度。ただし「こども」という名前で教育費と短絡しないこと商品を選ぶ前に、目的を決める。遠回りに見えて、これがいちばんの近道だと思っています。よくある質問(FAQ)Q1. こどもNISAは、学資保険の代わりになりますか?A. 「増やす・貯める」の部分は担えますが、「親に万が一のことがあっても教育費が用意される」という保障の部分は代わりになりません。何を優先したいか次第です。Q2. 学資保険は、もう入る意味がないのでしょうか?A. 返戻率(払った額に対して戻ってくる割合)だけを見ると、今は魅力が薄いと感じる方もいると思います。ただ、学資保険は「増やす」商品というより「保障を持ちながら、強制的に貯める」商品です。②保障性が必要かどうかで判断するのがよいかなと思います。Q3. 教育費は、こどもNISAでやるべきですか?A. 教育費は、親名義の通常のNISAで積み立てても問題ありません。「こども」という名前だから教育費に使う、と決める必要はありません。制度は良いものなので、目的に合うかで選んでください。Q4. NISAは元本割れが怖いです。A. 使う時期が近いお金を、まるごと値動きのある資産に置くのは、慎重でよいと思います。「いつ使うお金か」「それは絶対に必要なお金か」で、増やす部分と守る部分の配分を決めていくのがおすすめです。最後にここまで読んでいただき、ありがとうございました。教育費の話は、制度や商品の名前が次々に出てきて、正直、混乱しやすいテーマだと思います。ちなみに私自身は、NISAでも学資保険でもなく「変額保険」という、投資信託で運用しながら保障も持てるタイプを使っています。これは私の目的(保障と運用を一つにまとめたい)に合ったからで、誰にとっても最適という話ではありません(もちろん、リスクもあります)。つまり、正解は人によって違う、ということです。「わが家の場合はどう整理すればいいんだろう」と迷ったら、一度、目的の整理からご一緒させてください。ざっくりの状態で大丈夫です。参考・出典・こども支援NISA(2027年開始予定)の概要:七十七銀行 https://www.77bank.co.jp/financial-column/article93.html・教育費の目安(幼稚園〜高校の学習費総額):文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」 https://www.mext.go.jp/content/20260116-mxt_chousa01-000039333_3.pdf・変額保険の仕組み(元本保証の有無・費用):イオン銀行 https://www.aeonbank.co.jp/insurance/article/variable-insurance/免責本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・保険商品の購入を推奨するものではありません。制度内容は2026年8月時点のもので、こども支援NISAは今後詳細が変更・確定される可能性があります。運用商品には元本割れのリスクがあり、過去の実績や数値例は将来の成果を保証するものではありません。個別の判断は、ご自身の状況に合わせてご相談ください。