はじめに「今期は黒字でした。」それはもちろん良いニュースです。しかし、本当に確認すべきなのは、その黒字が会社の体力として積み上がっているかどうかです。「利益は出ているのに、会社の財務体質がなかなか強くならない」「内部留保が増えていると言われるけれど、通帳の現金はあまり増えていない」「純資産が増えている会社は、なぜ銀行から評価されやすいのだろう」もしそうお考えなら、あなたは「PL(損益計算書)の利益」と「BS(貸借対照表)の純資産」の違いを理解することで、経営判断が大きく変わるかもしれません。こんにちは、元銀行員FPの青栁です。銀行員時代から現在に至るまで、FPとして数多くの決算書を分析してきましたが、本当に強い会社ほど、「利益が出たか」ではなく、「その利益が会社の体力として積み上がっているか」を重視しています。今回は、純資産と内部留保の違い黒字なのに純資産が増えない理由株主資本等変動計算書の見方まで含めて、実務で役立つ形で整理します。結論:黒字が会社の体力になるかは「純資産の増え方」で決まるPLの黒字は、その年の成績です。一方で、BSの純資産は、創業から今日まで積み重ねてきた会社の体力を表しています。基本的には、当期純利益が出る利益剰余金が増える純資産が増えるという流れになります。つまり、利益を出し続け、純資産を厚くしていくことが、会社の財務体質を強くする王道です。しかし実際には、配当を支払った自己株式を取得した評価差額が発生した過去の赤字(欠損)の解消に利益が充てられたなどの理由によって、黒字でも純資産が思ったほど増えないケースがあります。だからこそ、「黒字だった」だけではなく、「純資産はどれだけ増えたのか」まで確認することが重要なのです。内部留保とは?最大の誤解は「現金」ではないこと「内部留保が1億円ある会社だから、現金も1億円ある。」このように考えてしまう方は少なくありません。しかし、これは大きな誤解です。一般的に内部留保と呼ばれるものは、利益剰余金(繰越利益剰余金)を中心とした概念です。つまり、創業以来積み上げてきた利益の累計を表しています。利益は必ずしも現金のまま残るわけではありません。例えば、売掛金になっている在庫になっている設備投資に使われている借入金の返済に充てられているなど、さまざまな形へ姿を変えています。つまり、内部留保=現金ではありません。正しくは、内部留保=会社が損失を吸収できる財務上のクッションとして理解すると、本質が見えてきます。純資産はどうやって増える?純資産は、次のような考え方で増減します。期末純資産 = 期首純資産 + 当期純利益 − 配当 − 自己株式取得 ± 評価差額 + 増資などつまり、黒字が出ても、配当や自社株買いなどによって純資産は減少することがあります。逆に、利益を内部へ積み上げ続ければ、純資産は年々厚くなり、会社の安全性も高まっていきます。黒字が内部留保になっているかを確認する3つの手順決算書を見るときは、次の順番で確認すると迷いません。STEP1 純資産合計は前年より増えたか?できれば3期比較で確認します。増えていれば、会社全体の体力は強くなっています。逆に減っている場合は、その理由を分解して確認する必要があります。STEP2 利益剰余金は増えたか?内部留保の中心になるのが、利益剰余金です。当期純利益が出ているにもかかわらず、利益剰余金がほとんど増えていない場合は、配当や自己株式取得など、利益以外の要因が影響している可能性があります。STEP3 株主資本等変動計算書を見るBSは、「結果」しか見せてくれません。なぜ増えたのか、なぜ減ったのか。その理由が書かれているのが株主資本等変動計算書です。ここを見ることで、純資産が増減した理由を正確に把握できます。株主資本等変動計算書は「純資産の履歴書」株主資本等変動計算書では、純資産が期首から期末まで、どのような理由で増減したのかを確認できます。最低限、確認しておきたい項目は次の5つです。当期純利益(利益剰余金が増える)配当(利益剰余金が減る)自己株式取得(純資産が減る)増資(資本金・資本剰余金が増える)評価差額など(その他包括利益)「黒字なのに純資産が増えない」という疑問の答えは、この書類を見ることでほぼ解決できます。具体例:黒字でも内部留保が積み上がらないケースケース①:利益がそのまま内部留保になる(理想的な状態)期首純資産:1,000万円当期純利益:+200万円配当:なし自己株式取得:なし↓期末純資産:1,200万円利益がそのまま会社の体力として積み上がっています。これは最も健全な状態です。ケース②:黒字でも配当によって純資産が増えにくい当期純利益:+200万円配当:▲180万円↓純資産増加:+20万円利益は出ていますが、その多くを株主へ配当したため、会社の体力はほとんど増えていません。ここで重要なのは、配当はPLの費用ではないという点です。利益を出した後に支払うため、PLには現れませんが、BSでは純資産を直接減少させます。ケース③:黒字でも自己株式(自社株買い)によって純資産が増えない当期純利益:+200万円自己株式取得:▲200万円↓純資産増減:±0円自己株式は資産ではありません。会社が自社株を買い戻すと、会計上は純資産のマイナス(控除項目)として処理されます。利益は出ていても、その分だけ会社の資金が社外へ流出するため、純資産は増えません。ケース④:評価差額によって純資産が減少する当期純利益:+200万円有価証券評価差額など:▲250万円↓純資産:▲50万円「利益は出ているのに純資産が減る」という現象は、このようなケースでも起こります。中小企業では頻繁ではありませんが、保有株式外貨建資産その他包括利益などがある会社では注意が必要です。ケース⑤:黒字でも過去の赤字を埋めている途中期首利益剰余金:▲500万円当期純利益:+200万円↓期末利益剰余金:▲300万円これは、「黒字なのに内部留保になっていない」のではありません。過去の赤字(欠損)を回復している途中という状態です。利益剰余金がプラスへ転じるまでは、会社の体力を回復させる期間だと考えましょう。銀行は「純資産」を会社の体力として見ている銀行が決算書を見るとき、純資産は非常に重要な判断材料です。純資産が厚くなることで、自己資本比率が高まる債務超過リスクが低くなる赤字になっても耐えられる余力が増える追加融資や借換えの相談がしやすくなるといったメリットがあります。銀行から見れば、純資産は「会社がどれだけ失敗に耐えられるか」を示すクッションです。だからこそ、黒字を積み重ねて純資産を厚くする会社は、財務体質の強い会社として評価されやすくなります。純資産が増えても、現預金が増えるとは限らないここも非常に誤解されやすいポイントです。純資産が増えたからといって、現金が同じだけ増えるわけではありません。例えば利益を出したお金は、売掛金在庫設備投資借入返済などへ姿を変えることがあります。つまり、純資産の増加は会社の体力が増えたことを意味します。一方、現預金の増加は今すぐ使えるお金が増えたという意味です。会社を強くするためには、この2つを分けて考えることが重要です。今日から使える「純資産」診断チェックリスト決算書を見るときは、次の順番で確認してみてください。□ 当期純利益は黒字か□ 純資産合計は前年より増えているか(できれば3期比較)□ 利益剰余金は増えているか□ 当期純利益と利益剰余金の増加額に大きな差はないか□ 配当を支払っていないか□ 自己株式を取得していないか□ 評価差額などで純資産が減っていないか□ 過去の欠損を解消している途中ではないか□ 株主資本等変動計算書で増減理由を説明できるか□ 純資産は増えているのに、運転資金の増加で現預金が減っていないか□ 社長や役員への資金移動が資金繰りを圧迫していないか□ 来期も純資産を積み上げられる利益計画になっているか今日からできる3つの改善ポイント① 本業で利益を積み上げる再現性のある営業利益を積み上げることが、純資産を増やす最も確実な方法です。そのためには、粗利率の改善適正な価格設定原価管理マージンミックスの見直しなど、本業の利益構造を強くすることが重要です。② 配当・自己株式は資金計画とセットで考える配当や自己株式取得は、株主への還元として重要な施策です。しかし、会社の体力を減らす側面もあります。利益だけでなく、資金繰りや今後の投資計画も踏まえたうえで判断しましょう。③ 純資産だけではなく「現金」も残す利益が出ても、売掛金や在庫が増えすぎれば現金は減ります。純資産を積み上げながら、運転資金もコントロールすることで、本当に強い財務体質が完成します。よくある質問(Q&A)Q. 内部留保が多い会社は、現金もたくさん持っているのでしょうか?いいえ。内部留保は利益剰余金を中心とした会計上の概念であり、現金そのものではありません。利益が設備投資や在庫、売掛金などに変わっている場合も多くあります。Q. 黒字なのに純資産が増えないことはありますか?あります。配当や自己株式の取得、評価差額、過去の赤字の解消などによって、純資産の増加が小さくなることがあります。その理由は株主資本等変動計算書で確認できます。Q. 銀行は利益と純資産のどちらを重視していますか?どちらも重要ですが、銀行は純資産を会社の体力として非常に重視します。利益を継続して積み上げ、純資産が年々厚くなっている会社は、融資審査でも評価されやすい傾向があります。さらに理解を深めたい方はこちらこの記事とあわせて読むことで、会社のお金の流れを立体的に理解できます。【FP監修】貸借対照表(BS)とは?見方・読み方を元銀行員FPがわかりやすく解説|黒字倒産を防ぐ財務の基本【FP監修】内部留保とは?「純資産=会社の歴史」を理解して経営の体力を正しく読む方法【FP監修】運転資金とは?売上が伸びるほど現金が減る理由と黒字倒産を防ぐ方法を元銀行員FPが解説まとめ黒字は、その年の成果です。一方で純資産は、創業以来積み上げてきた会社の体力を表しています。黒字が出ても、配当や自己株式の取得、評価差額、過去の赤字の解消などによって、純資産が思うように増えないことがあります。また、純資産が増えたとしても、それがそのまま現金として残るわけではありません。決算書を見るときは、「利益が出たか」だけではなく、「会社の体力は厚くなったか」まで確認することが重要です。その視点を持つことで、決算書は単なる過去の記録ではなく、会社の未来を支える経営判断の羅針盤になります。最後に最後までお読みいただき、ありがとうございました。この記事が、自社のお金について考えるきっかけになれば嬉しいです。もし、「利益は出ているのに、なぜお金が残らないのだろう?」「もっと会社にお金が残れば、どんな経営ができるだろう?」そう感じたら、まずは、自社の現在地を確認してみてください。🎁 LINE登録者限定プレゼント5分でわかる!利益は出ているのに、お金が残らない会社10の原因診断たった10個の質問で、自社にお金が残る経営への第一歩が見えてきます。この診断で得られること✅ 自社にお金を残すために、何から始めればいいかが分かる✅ お金の流れが見え、自信を持って経営判断できるようになる✅ 自社の未来の選択肢を広げるヒントが見つかるさらにLINEでは、元銀行員FPが、会社と社長に、お金と安心を残すための経営判断に役立つ情報をお届けしています。お受け取り方法① 下のボタンからLINEに登録② LINEで 「現在地」 と送るだけ③ 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