学資保険と節税学資保険とは、子供の教育費を準備するための保険です。死亡や病気、ケガに備える終身保険や医療保険とは違い、将来の資金のために貯蓄する保険です。しかし学資保険の活用で、節税対策ができることはあまり知られていません。ここでは学資保険とは何かを説明し、学資保険で節税するとは、どういうことかを解説します。学資保険とは学資保険とは、子供の教育資金を準備するための、貯蓄型の保険です。学資保険は、毎月決まった保険料を支払うことで、子供の成長や進学に合わせて祝金・満期保険金を受け取ることができます。学資保険は、子供の教育資金を安全に計画的に貯めるのに有効です。なぜなら、契約者が死亡したり高度障害になったりして、保険料が払えなくなっても満額の保障を受けられるからです。また医療保障や死亡保障などを特約で付加することで、家族の死亡や病気、ケガに備えることもできます。学資保険の保障は幅広く、家族を守りながら子供の教育資金に備えられる万能な保険なのです。学資保険のメリット学資保険のメリットは、次の3点です。節税ができること資金を増やせる可能性があること契約者に万が一のことがあっても確実に教育資金を備えられること学資保険は節税ができます。後に解説しますが、生命保険料控除の対象になって、所得税と住民税の課税額を減らせます。また、学資保険は支払った保険料より多くの保険金を受け取れる可能性があります。なぜなら、保険会社が支払った保険料を運用しているからです。保険会社の仕事の一つに、資産運用があります。保険加入者が支払った保険料を、運用して増やすのも保険会社の仕事なのです。そのため、支払った保険料よりも多くの保険金を受け取れるのです。 さらに、契約者に万が一のことがあって保険料が支払えなくなっても、満額の保障を受け取れます。理由は、学資保険に保険料免除特約があるからです。親が亡くなっては、教育資金は貯まりませんよね。そのようなリスクに備えてくれるのが、学資保険なのです。学資保険のデメリット学資保険のデメリットは、すぐに現金化しにくいことです。支払った保険料は、引き出すことができません。急に現金が必要になった場合は、解約するしか手段がありません。解約には手間と時間がかかります。また、返済された金額は支払った保険料よりも少ないことがほとんどです。学資保険で節税とは学資保険での節税とは、生命保険料控除を使っての節税のことです。控除とは、金額を差し引くことを言います。そして生命保険料控除は、課税対象になっている所得額から、支払った保険料の一定額を差し引くことを意味します。所得税は、所得の多さによって決まりますよね。生命保険料控除を使って、所得額を減らせれば、払う税金も少なくできるのです。学資保険での節税と仕組みでは、学資保険の活用によって、具体的にどのようにして節税できるのでしょうか。ここでは、学資保険が節税対策になる仕組みを解説していきます。学資保険が節税できる理由は、生命保険料控除という制度によるもので、原則全ての生命保険に適用されます。また、生命保険料控除には一般生命保険料控除と介護保険料控除、個人年金保険料控除の3種類があります。その中で、学資保険は主に一般生命保険料控除の適用を受けます。一般生命保険料控除は、所得控除の1つで、控除を適用することで所得税と住民税を節税できます。ただ、控除額には限度額が決められているため、注意が必要です。限度額は所得税と住民税で違います。所得税の限度額は年間4万円で、住民税が2.8万円です。つまり、年間の所得から最大4万円を引いた分が課税対象になるということですね。保険料は決して安くないので、限度額分の控除を受けられることが多いです。控除は、サラリーマンなら年末調整で、自営業者なら確定申告で税務署に申請するようになっています。生命保険料控除について解説先ほど触れましたが、生命保険料控除には一般生命保険料控除と介護保険料控除、個人年金保険料控除の3種類があります。ほとんどの方が学資保険を含め、いろいろな保険と関わりをもっていると思います。そのため、3種類の特徴は知っておいて損することはありません。学資保険以外の保険に加入されている方にも役立つことなので、それぞれの詳しい特徴を見ていきましょう。①一般生命保険料控除一般生命保険料控除は、満期まで生存したときや死亡したときに備える保険に適用されます。具体的には、終身保険や定期保険、養老保険、学資保険などです。また、生命共済にも適用されます。一般生命保険料控除の対象になる保険はたくさんあるので、保険料を払いすぎると節税効果が小さく、もしくは全く無くなってしまう恐れがあります。一般生命保険料控除の所得税控除限度額は4万円で、超えたら節税効果が期待できなくなるからです。そのため学資保険で節税をするなら、他の保険の保険料がいくらかを把握することが大切です。もし限度額を超えていたら、保険の解約を検討するなどして、控除枠を確保するのもおすすめです。②介護医療保険料控除介護医療保険料控除は、平成24年に新設された控除枠です。したがって、平成24年以降に契約した保険にしか適用されません。対象となる保険は、病気やケガをして入院・通院が必要になったときに、一定額の給付金が支払われる保険へ支払っている保険料です。具体的には、がん保険や医療保険、介護保険などです。ただし、傷害保険や5年未満の契約の保険、貯蓄機能のある保険は控除の対象になりません。学資保険は、貯蓄機能のある保険です。したがって学資保険は、介護医療保険料控除の対象にはなりません。③個人年金保険料控除個人年金保険料控除の適用になるのは、「個人年金保険料税制適格特約」を付加された保険へ支払った保険料です。老後に備えるための年金保険などが、該当します。「個人年金保険料税制適格特約」とは、一般保険料控除とは別に、個人年金保険料控除を受けるために付加する特約のことです。付加するには、条件があります。年金の受取人が契約者本人か、その配偶者であること、保険料の払込期間が10年以上であることなどです。個人年金保険料控除も、4万円まで控除できます。一般生命保険料控除と合わせれば、年間で最大8万円の所得控除にのぼります。※2022年3月の執筆時点での税制をもとに解説しておりますが、個別税務につきましては所管の税務署にてご確認をお願い致します。学資保険の節税計算学資保険の節税方法の概要がわかったところで、具体的な計算方法を解説していきます。生命保険料控除の計算方法は、平成24年に変更がありました。ここでは、変更前の新制度と変更後の旧制度に分けて紹介します。また、事例を用いたシミュレーションもしますので、参考にしてみてください。学資保険の節税計算(新制度)学資保険は、一般生命保険料控除の適用になります。控除の限度額は所得税で4万円、住民税で2.8万円にです。学資保険に15年間加入していたとすると、最大で4(万円)×15(年)=60(万円)の節税効果が得られます。節税効果の大きさは、支払う保険料によって違います。ここでは表にして、いくらの保険料を支払えばどれほどの節税効果を期待できるかを、所得税と住民税に分けて紹介します。所得税の場合年間払込保険料控除される金額20,00円以下払込保険料全額20,001〜40,000円(払込保険料×1/2)+10,000円40,001〜80,000円(払込保険料×1/4)+20,000円80,001円以上一律40,000円住民税の場合年間払込保険料控除される金額12,00円以下払込保険料全額12,001〜32,000円(払込保険料×1/2)+6,000円32,001〜56,000円(払込保険料×1/4)+14,000円56,001円以上一律28,000円所得税なら、年間払込保険料が8万円を超えると4万円、住民税なら5.6万円を超えると、2.8万円の控除になります。控除の限度額は、3種類の控除枠で使えるので、全て合わせると所得税で最大12万円の控除が受けられる計算になります。学資保険の節税計算シミュレーション言葉だけの説明ではわかりにくいと思うので、具体的な例を用いて計算していきたいと思います。それでは、例として下記のような家族がいたとします。夫33歳で1年間の所得は500万円妻30歳・専業主婦子供0歳学資保険に加入し、毎月1万円の保険料を払っている学資保険の払込期間は20年その20年間、家族の所得に大きな変化はないとする例のような状況で、1年間でどれほどの節税効果があるかを計算します。国税庁によると、年収500万円の家庭には、税率20%で課税されることになります。住民税は、地域によって異なりますので、ここでは収入に対して10%の課税があると仮定します。以上を踏まえると、下記のような計算方法になります。年間払込保険料は12万円払込保険料が8万円を超えているので、所得税は限度額の4万円、住民税は限度額の2.8万円を控除できる。控除額は所得額から差し引くので、500(万円)−4(万円)=496(万円)が、課税される所得になる。つまり節税できる金額は所得税で、4万円に税率20%をかけた8千円となる。住民税は、2.8万円に税率10%をかけた2.8千円となる。所得税と住民税を合計すると、年間1万800円の節税ができることになる。払込期間が20年間なので、1万800円に20をかけた、21.6万円の節税効果が期待できる。税率が上がれば、さらなる節税効果を期待できます。もし貯金で教育資金を貯めていても、このような節税効果は期待できませんよね。長期間加入することで、数十万円の節税効果が期待できるのは、大きなメリットと言えるでしょう。学資保険の節税計算(旧制度)旧制度の控除額は、平成24年より前に契約した保険にしか適用されません。新制度と旧制度では、控除される限度額が異なります。旧制度の控除される限度額は所得税が5万円、住民税は3.5万円です。新制度と同じように、いくらの保険料に対して、どれくらい控除できるかを表にまとめてみました。所得税の場合年間払込保険料控除される金額25,00円以下払込保険料全額25,001〜50,000円(払込保険料×1/2)+12,500円50,001〜100,000円(払込保険料×1/4)+25,000円100,001円以上一律50,000円住民税の場合年間払込保険料控除される金額15,00円以下払込保険料全額15,001〜40,000円(払込保険料×1/2)+7,500円40,001〜70,000円(払込保険料×1/4)+17,500円70,001円以上一律35,000円所得税なら、年間払込保険料が10万円を超えると一律5万円、住民税なら7万円を超えると一律3.5万円の控除になります。学資保険の節税計算シミュレーションでは、次のような例で旧制度の計算シミュレーションを行います。夫33歳で1年間の所得は500万円妻30歳・専業主婦子供0歳平成23年に学資保険に加入し、毎月1万円の保険料を払っている学資保険の払込期間は20年その20年間、家族の所得に大きな変化はないとする以上を踏まえると、下記のような計算方法になります。年間払込保険料は12万円。払込保険料が10万円を超えているので、所得税は限度額の5万円、住民税は限度額の3.5万円を控除できる。控除額は所得額から差し引くので、500(万円)−5(万円)=495(万円)が、課税される所得になる。つまり、節税できる金額は所得税で、5万円に税率20%をかけた1万円となる。住民税は、3.5万円に税率10%をかけた3.5千円となる。所得税と住民税を合計すると、年間1万3,500円の節税ができることになる。払込期間が20年間なので、1万3,500円に20をかけた、27万円の節税効果が期待できる。かなり簡略化していますが、新制度と旧制度で節税できる金額は、以上のようになります。加入する上での、参考にしてみてください。学資保険の節税・控除の方法学資保険に入っているだけで、生命保険料控除を受けられるわけではありません。控除を受けるためには、申請が必要です。申請の方法は、会社員・公務員か、自営業者かによって異なります。それぞれの申請方法について、解説していきます。会社員や公務員は年末調整会社員や公務員は、年末調整で生命保険料控除の申請を行います。年末調整とは、本来徴収されるはずだった所得税の総額を計算し直して、過不足分を調整することです。年末調整はどこかの役所にいって、雑多な手続きをする必要はありません。必要な手続きは「給与所得者の保険料控除申告書」を勤務先に提出するだけです。加入している保険会社から、「生命保険料控除証明書」が送られてくるので、その内容を「給与所得者の保険料控除申告書」に記載すれば手続きは終わります。他にも地震保険料控除や社会保険料控除の記載場所もあるので、併せて申請しましょう。自営業者は確定申告自営業者は、確定申告時に一緒に生命保険料控除を申請します。保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」の内容を確定申告書に記入して、2つの書類を一緒に税務署に提出します。数字は正確に記入するよう、注意が必要です。学資保険による節税のポイントと注意点学資保険で節税をするには、知っておくべきポイントや注意点があります。知らなかったことで損することもあるので、きちんと把握しておくことが大切です。ここでは、3つのポイント・注意点を紹介します。節税にならないケースがある学資保険は、一般生命保険料控除の対象になりますが、節税にならないケースがあります。それは他の保険によって、控除枠を全て使い切っているときです。一般生命保険料控除には、所得税なら年間払込保険料が8万円を超えると4万円、住民税は5.6万円を超えると2.8万円の限度額がありました。つまり、年間払込保険料が8万円より多いなら、もう節税効果を期待できません。一般生命保険料控除には、学資保険の他に、終身保険や定期保険なども対象になっています。子供ができたことをきっかけに、そのような保険に加入される方も多いでしょう。すると学資保険の保険料と合わせて、年間払込保険料が8万円を超えてしまいかねません。一般生命保険料控除の控除枠を使い切ってしまうと、節税にならないケースがあることは確認しておく必要がありますね。学資保険の節税では満期返戻金に注意学資保険の満期返戻金を受け取る際に、課税されることがあります。課税されるケースには、いくつかあります。その1つが契約者本人が、満期返戻金を受け取ったときです。契約者本人が受け取った満期返戻金は一時所得になり、所得税の課税対象になります。ただし、課税されない可能性もあります。なぜなら、一時所得には特別控除があるからです。一時所得は、次のような計算式で求められます。一時所得=「受け取った満期返戻金」−「支払った総額保険料」−「特別控除(50万円)」一時所得の計算には、特別控除の50万円があります。学資保険で50万円以上の利益が出たときだけ、課税対象になります。つまり満期返戻金が、支払った保険料の総額よりも50万円も多い場合に、満期返戻金に課税されるのです。ただ、よほどの高額な学資保険に加入しない限り、利益が50万円を超えることはありません。学資保険が贈与税の対象になることも学資保険の満期保険金を契約者本人ではない人(子供など)が受け取った場合、贈与税の対象になります。贈与税額は次の計算式で求められます。贈与税額=(満期保険金−基礎控除(110万円))×税率−控除額税率については、表にまとめて紹介します。基礎控除後の課税価格税率控除額200万円以下10%-300万円以下15%10万円400万円以下20%25万円600万円以下30%65万円1,000万円以下40%125万円1,500万円以下45%175万円3,000万円以下50%250万円3,000万円超え55%400万円例として受け取った満期保険金が300万円だったとしましょう。すると、次のような計算になります。(300万円−110万円)×10%−0円=19万円計算式から満期保険金を300万円受け取ると、19万円の贈与税を払う必要があることがわかります。本人が受け取っていれば、贈与税はかからなかったのでもったいないですね。以上のように、贈与税がかかることがあるので要注意です。学資保険の節税効果を上げる方法学資保険は、工夫しだいで効果的に節税することもできます。ここでは、その方法を紹介します。①共働きなら夫婦それぞれが加入する学資保険は、夫婦それぞれで加入することができます。共働きであれば夫が全てを負担するよりも、夫婦で1つずつ加入する方が、負担を分散できるでしょう。すると、一般保険料控除の枠が2人分になるので8万円まで控除を受けられます。他の保険によって、控除枠が使えなくなるリスクも少なくすることができますよ。②加入している保険の見直し学資保険は、一般保険料控除の対象になっています。一般保険料控除の対象になるのは、学資保険以外にも終身保険や定期保険などがあります。控除枠には限度があるため、学資保険以外の保険で控除枠が埋まってしまうと、節税効果が薄れてしまいます。そうならないためにも、不要な保険はできる限り見直して、解約するのがいいでしょう。そうすれば控除枠を確保できる可能性も上がりますし、毎月の出費も減らすことができます。③満期保険金が高額なら分割して受け取る満期保険金には、所得税や贈与税がかかる場合があります。受け取る保険金額が多くなればなるほど、税金額も大きくなっていきます。とはいえ、基礎控除枠があるため、その範囲内に収めることができれば、税金はかかりません。満期保険金を分割で受け取れれば、一度にかかる税金を少なくしたり、なくしたりすることができます。分割するには、満期保険金の代わりに祝金を増やしたり、一部解約して解約返戻金を受け取ったりする方法があります。ただし工夫することで、逆に損をしてしまう可能性もあります。計算をした上で、どちらが得かの把握が必要です。まとめ学資保険で節税ができると言っても、実際に制度を活用するのは、抵抗感があったり不安感があったりするものです。どのように節税するのが良いのかという判断も、難しいですよね。そこで節税効果を高めるためにも、プロに相談するのがおすすめです。自分にあった節税方法や、節税する際の注意点を親身になって伝えてくれますよ。最後に、本記事のまとめを記載します。学資保険とは、子供の教育資金を準備するための貯蓄型の保険。学資保険のメリットは、「節税ができること」と「資金を増やせる可能性があること」、「契約者に万が一があっても確実に教育資金を備えられること」。学資保険のデメリットは、現金化しにくいこと。学資保険は「一般生命保険料控除」の適用を受け、所得税の限度額は年間4万円で、住民税が2.8万円。生命保険料控除には、一般生命保険料控除と介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3種類がある。旧制度の生命保険料控除の限度額は所得税が5万円、住民税は3.5万円。生命保険料控除は、会社員や公務員は年末調整で、自営業者は確定申告で申請する。学資保険は、控除枠を他の保険で使い切ってしまった場合、節税にならない。保険金額が多いと一時所得になって、課税される場合がある。保険金の受取人が契約者以外だと、贈与税の対象になる。夫婦で学資保険に加入したり、加入している保険を見直したり、保険金を分割で受け取ったりすることで、節税効果を高められることもある。「まずは気軽にお金のことを相談してみたい!」という方にお勧めなのが、MoneypediaのオンラインFP相談サービスです。保険やライフプランをはじめとするお金のことをいつでも・どこでも・気軽に・何度でも専門家に相談することが出来ます。まずは一度、ご相談されてみてはいかがでしょうか。