そもそも退職金とは?仕組みを解説退職金とは、働いていた企業から退職時に支払われる賃金のことです。退職金の支給方法は以下の3つに大別されます。退職一時金制度企業年金制度前払い制度「退職一時金制度」は退職時に一括で、「企業年金制度」は退職後から定期的に分割で、退職金が支給される方法です。ただし「前払い制度」では、毎月の給与やボーナスに上乗せして退職金が支給されるため、知らないうちに使ってしまわないようにしましょう。また中小企業の中には、そもそも退職金制度を設けていない企業もあるため注意してください。東京都産業労働局によると、28.3%の中小企業は退職金制度を設けていないそうです。そのため自分の退職金について気になる方は、勤務先の退職金制度を確認してみると良いでしょう。参考:東京都産業労働局|中小企業の賃金・退職金事情(令和5年版)大企業の退職金はいくら?大企業の定年時の平均退職金額を学歴別に見ると、以下の通りです。学歴平均退職金額大学卒2511万円短大・高専卒1882万円高卒2379万円このように定年時の退職金額では、大学卒と高卒にはほとんど差がないことがわかります。ただし退職金額は、勤続年数や業種によって大きく異なるため、ここからは勤続年数別と業種別で平均退職金額を紹介します。参考:中央労働委員会|令和元年度賃金事情等総合調査 勤続年数別の退職金大企業で勤務している大学卒の平均退職金額を勤続年数別に見ると、以下の通りです。勤続年数(年齢)会社都合退職自己都合退職3年(25歳)69万円32万円5年(27歳)118万円59万円10年(32歳)310万円180万円15年(37歳)578万円387万円20年(42歳)953万円727万円25年(47歳)1394万円1143万円30年(52歳)1915万円1706万円35年(57歳)2365万円2163万円38年(60歳)2528万円2269万円上記の表から分かるように、転職などの自己都合退職の方が会社都合退職よりも退職金額は少なくなりますが、定年が近づくと差は縮小します。また若手社員が転職で退職する場合も、5年間働いていれば59万円とまとまった金額が受け取れるため、退職後に転職活動をする場合でも、2〜3ヶ月は退職金を頼りに生活できるでしょう。参考:厚生労働省|賃金事情等総合調査(2021年度)業種別の退職金大企業で勤務している大学卒の平均退職金額を業種別で見ると、以下の通りです。業種退職金の平均額鉱業2902万円繊維3942万円化学2174万円石油4072万円機械1253万円建設2583万円銀行・保険2308万円私鉄・バス2419万円海運・倉庫1752万円百貨店・スーパー2463万円新聞・放送2643万円ホテル・旅行2202万円全産業の合計2511万円上記の表から分かるように、最も退職金額が高いのは「石油業」の4072万円、最も低いのは「機械業」の1253万円で、約2800万円も異なります。このように退職金額は業種によって大きく異なるため、自分の働いている業種に合わせて、確定拠出年金やNISAなど、退職金以外の老後資金形成手段を考えましょう。参考:中央労働委員会|令和元年度賃金事情等総合調査中小企業の退職金はいくら?中小企業の定年時の平均退職金額を学歴別に見ると、以下の通りです。学歴平均退職金額大学卒1092万円短大・高専卒983万円高卒994万円上記の表から分かるように、どの学歴の平均退職金額も大企業の半分以下しかなく、「こんなに少ないとは思っていなかった…」という方が多いのではないでしょうか。なぜ中小企業の退職金は少ないかというと、中小企業は大企業よりも経営基盤が整っておらず、退職金を確実に支払える経済力がないからです。そのため中小企業で働いている方は、老後資金を形成するには退職金だけでなく、確定拠出年金やNISAなども利用する必要があるでしょう。ここからは大企業と同様に、勤続年数別と業種別で平均退職金額を紹介します。参考:東京都産業労働局|中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)勤続年数別の退職金中小企業で勤務している大学卒の平均退職金額を勤続年数別に見ると、以下の通りです。勤続年数(年齢)会社都合退職自己都合退職3年(25歳)34万円23万円5年(27歳)64万円47万円10年(32歳)150万円112万円15年(37歳)266万円213万円20年(42歳)415万円343万円25年(47歳)578万円491万円30年(52歳)754万円654万円35年(57歳)876万円776万円38年(60歳)1092万円-このように中小企業では、定年退職時だけでなく、各年齢別の退職金額も大企業の半分以下であることが分かります。若手社員が転職で退職する際は、5年働いていれば47万円は受け取れますが、退職後に転職活動をする場合はあらかじめ貯金をしておく必要があるでしょう。参考:東京都産業労働局|中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)業種別の退職金中小企業で勤務している大学卒の平均退職金額を業種別で見ると、以下の通りです。また大企業とは別の統計資料を使用しており、業種の区分が異なるため注意してください。業種退職金の平均額建設業1220万円製造業1068万円情報通信業1193万円運輸業、郵便業1332万円卸売業、小売業1132万円金融業、保険業1442万円不動産業、物品賃貸業1013万円学術研究、専門 ・ 技術サービス業965万円生活関連サービス業、娯楽業847万円教育、学習支援(学校教育を除く)1245万円医療、福祉342万円サービス業904万円全産業の合計1092万円上記の表から分かるように、中小企業では退職金額が1000万円を下回ることも珍しくないため、退職金以外にも老後資産形成を進める必要があるでしょう。参考:東京都産業労働局|中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)女性の退職金は男性よりも少ない?一般的に女性は男性よりも、退職金額が少ない傾向にありますなぜなら女性は妊娠・出産などのために、一時的に仕事を辞めることがあり、勤続年数が男性よりも短くなりがちだからです。退職金は一般的に、勤続年数と役職に応じて支払われることが多く、勤続年数が長く出世しやすい男性の方が退職金額が多くなります。実際に私の女性の知人は、大企業に10年以上勤めていましたが、退職金はそれほど多くなかったと言います。その理由としては、育休の取得によって勤続年数が短くなったこと、また復帰後は非正規雇用になったため、退職金の算出対象になる給与が低かったことが挙げられるそうです。ただし、近年は女性の社会進出が進んでいることから、男女の退職金格差は縮まりつつあります。企業によっては男女の退職金について同一基準を設けるようになっているため、興味がある方は勤務先の退職金制度を確認してください。老後資産を自分で形成する方法を3つ紹介退職金以外で老後資産を形成する方法は、以下の3つです。確定拠出年金新NISA保険を見直す特に中小企業で勤務している方は、ぜひ参考にしてください。確定拠出年金確定拠出年金とは、国民年金や厚生年金とは別に、自分で老後資産を作る私的年金制度です。企業型を「企業型DC」、個人型を「iDeCo(イデコ)」と呼びます。そして確定拠出年金のメリットは、以下の2つです。掛金が所得から控除される60歳まで資金を引き出せないまず確定拠出年金で支払う毎月の掛金は、全額所得控除されるため、所得税と住民税を節税できます。また、人は目の前にお金があるとどうしても使いたくなってしまうため、60歳まで資金を引き出せなくすることで、老後資産を確実に形成できます。実際にどれくらいの老後資金を形成できるか、以下の条件で試算してみましょう。毎月の掛金:毎月23,000円運用期間:35年間運用利率:3%所得税・住民税の節税額2,898,000円積立元金9,660,000円運用益7,395,964円合計金額(積立元金+運用益)17,055,964円上記の場合は約290万円も節税しながら、約1700万円も年金として受け取れます。このように確定拠出年金は資産形成に非常に有効なため、ぜひ有効活用してください。iDeCo(イデコ)に興味がある方は、こちらの記事も参考にしてください。新NISANISAとは、資産形成を行いたい人をサポートするための、投資非課税制度です。通常の証券口座では、株式・投資信託で得た売却益等に20.315%の所得税がかかりますが、NISA口座の場合は所得税はかかりません。また2024年1月から、NISA制度が以下のように大幅拡充されることが決定しました。 現行のNISA新NISA(2024年1月~)名称一般NISAつみたてNISA成長投資枠つみたて投資枠年間投資額120万円40万円240万円120万円保有期間5年20年無期限生涯投資上限額600万円800万円1200万円600万円利用可能期間2023年まで2042年まで恒久化投資は長期で行うほうが大きな利益を期待できるため、保有期間の無期限化は特に好ましい変更点です。実際にどれくらいの老後資金を形成できるか、以下の条件で試算してみましょう。毎月の掛金:毎月42,000円運用期間:35年間運用利率:3%積立元金17,640,000円運用益13,505,674円合計金額(積立元金+運用益)31,145,674円上記の場合は、積立元金と運用益を合わせて約3115万円も老後資金として受け取ることができます。このように新NISAは資産形成に非常に有効なため、2024年からぜひ始めてみましょう。新NISAに興味がある方は、こちらの記事も参考にしてください。保険を見直す保険の見直しは、老後資産の形成にとって有効な手段の1つです。なぜかというと不要な保険を見直すことで保険料の節約が出来る資産性の保険を活用することで節税しながら効率的な資産形成が出来るからです。実はご自身の目的やニーズにあわせて適切な保険をプランニング出来ているという方はあまり多くありません。保険には多種多様な種類があり、掛け捨てのものから積立のものまでご自身で調べて理解をするということは非常に難しいといわれています。そのため保険の見直しは、あなた自身のライフプランに合わせて行うことが大切なため、プロのアドバイザーに相談することをおすすめします。まとめ 退職金っていくらもらえるの?大卒サラリーマンの平均退職金額は、大企業では2511万円、中小企業では1092万円と、大企業の方が2倍以上も多いです。なぜなら、大企業は中小企業よりも経営基盤が強固な場合が多く、退職金を確実に支払える経済力があるからです。ただし、退職金は勤続年数に応じて支払われることが多いため、人によっては大企業でも数百万円しかもらえないこともあります。また女性の場合、妊娠や出産で一時的に仕事を辞めることで、勤続年数が短くなりがちのため、退職金額が男性よりも低いことが多いです。そのため老後資金を形成するには、退職金だけに頼るのではなく、確定拠出年金やNISAなども考える必要があるでしょう。しかし、自分1人だけで老後資金形成を考えるのは難しいという人が多いでしょう。そのような際には、一度専門家と面談してみてはいかがでしょうか。「まずは気軽にお金のことを相談してみたい!」という方にお勧めなのが、MoneypediaのオンラインFP相談サービスです。保険やライフプランをはじめとするお金のことをいつでも・どこでも・気軽に・何度でも専門家に相談することが出来ます。まずは一度、ご相談されてみてはいかがでしょうか。