個人年金保険の解約は避けるべき?個人年金保険は将来の年金を受け取るために積み立てしていくタイプの保険であり、長期に渡り保険会社が運用することを前提としているため、途中解約は想定していません。したがって、途中解約すると将来の年金は受け取れなくなります。 個人年金保険の解約返戻金に関するリスク・注意点個人年金保険の商品や払込保険料、契約期間によりますが、個人年金保険は途中解約しても解約返戻金を受け取ることができる場合があります。気になるのは解約返戻金が既に支払った保険料の総額よりも多いのかどうかだと思います。途中解約するとたいていの場合は既に支払い済みの保険料よりも少なくなり、元本割れしてしまいます。保険料払込期間が終了する直前であれば既に支払った保険料よりも多くの解約返戻金が戻ってくることもありますが、加入期間が短いとその分解約返戻金が少なくなります。2〜3年程度で途中解約すると解約返戻金が50%を下回ることがほとんどで、10年以上保険に加入してようやく9割以上戻ってくるのが一般的です。 解約返戻金とは生命保険会社は加入者から支払われた保険料の中から一定の割合を将来の保険金の支払いに備えるために積み立てています。この積立金のことを責任準備金といいます。解約返戻金とは保険者の側から保険を契約期間の途中で解約したときや保険会社が保険の契約を解除した時に責任準備金の一部から加入者に払い戻しされるお金です。保険加入時に保険の契約内容をしっかり確認していた場合でも家族が増えたなどの生活環境の変化やより魅力的な保険商品に切り替えたいと思った時のために解除返戻金は用意されています。解約返戻金があることで戻ってくるお金で将来の資産形成が可能になります。解約返戻金には従来型低解約返戻金型無解約返戻金型の3つの種類があり、自分が加入している保険の解約返戻金がどの種類に当てはまるのかを確認する必要があります。従来型とは解約返戻金の中で最も基本的なタイプであり、払戻率によって解約返戻金の額が算出されます。 払戻率は保険商品によって異なりますが、昨今のマイナス金利の影響を受けて、払戻率は低く抑えられています。低解約返戻金型とは保険料を支払っている期間の解約返戻金を従来の70%程度にしています。保険料を支払っている期間の解約返戻金は少なくなりますが、その分保険料は割安になっています。保険料払込期間終了後は解約返戻金の払戻率は上昇し、保険商品によっては100%近くになります。無解約返戻金型とは解約返戻金が無いタイプです。解約返戻金がない代わりに解約返戻金がある保険と比較して保険料は安くなります。 解約返戻金を受け取れるタイミング解約返戻金の額は保険の契約内容や保険料払込期間によって異なりますが、解約返戻金が受け取れる額まで保険料の支払いを継続すれば、生命保険会社に連絡して解約の請求をするだけで受け取れます。解約手続きに必要な書類に記入・押印のうえ返送し、内容に不備がなければ1週間程度で振り込まれるのが一般的です。郵送ではなく、生命保険会社の窓口に直接行けば、郵送の手間が省けて、手続きが速やかに終了するだけではなく、書類の書き方などを教えてもらえます。 解約返戻金の額を計算シミュレーション返戻率は解約返戻金の金額÷既保険料払込額×100で計算できます。返戻率とは保険料の払込総額に対して、途中解約した際に戻ってくる解約返戻金の割合のことです。返戻率が100%以下であれば、既保険料払込額よりも解約返戻金が少なくなります。 解約返戻金を確認する方法生命保険会社によりますが、保険証券に解約返戻金の推移を記載している場合があります。また、定期的に送付される契約内容についての通知に記載されている場合や生命保険会社のウェブサイトで現在の解約返戻金額を確認できる場合があります。最も確実な方法は生命保険会社のカスタマーセンターに問い合わせをして、現在の解約返戻金の金額について聞いてみることです。 解約返戻金に課税が発生するケース解約返戻金に課税が発生するケースは所得税に課税される場合と贈与税が課税される場合の2通りあります。まず、個人年金保険を解約した場合の解約返戻金は保険契約者が受け取ります。保険契約者は保険料を支払ってきた保険料負担者でもあります。このように保険料負担者と解約返戻金の受取人が同じ人の場合に既に支払った保険料の総額よりも解約返戻金の金額が多い場合には個人年金保険の解約によって利益を得たとみなされます。その場合は一時所得として所得税の課税対象になります。一方で解約返戻金が既に支払った保険料の総額よりも少なければ所得税の課税対象にはなりません。支払う所得税の金額は以下の式で表されます。所得税額=(解約返戻金 - 支払った保険料の総額 - 50万円) × 1 / 2 上述のようにまずは所得税が課されますが、それはあくまで個人年金保険の契約者と解約返戻金の受取人が同じ人である場合です。しかし、なかには契約者と解約返戻金の受取人が異なる場合があります。例えば、夫が保険料負担者で妻が解約返戻金の受取人であるケースなどです。この場合は保険料の負担者(=契約者)と解約返戻金の受取人が違うので、贈与税の課税対象となります。課税対象額は以下の式で計算されます。課税対象額=解約返戻金-110万円贈与税には110万円の基礎控除があるため、解約返戻金が110万円を超える金額だった場合に課税対象となります。同じ年の間に他の贈与も受け取った場合は、その贈与額と解約返戻金の合算から110万円を引いた額が課税対象です。ちなみに贈与率は課税対象額の大きさによって異なり、最低税率が10%で、最高税率は55%になります。 個人年金保険の解約返戻金をなるべく多く受け取るコツこれまで支払ってきた保険料を少しでも取り戻すために、できるだけ多くの解約返戻金を受け取りたいという方は少なくないと思います。個人年金保険の解約返戻金を多く受け取るにはどうしたらいいのでしょうか? ①返戻率の高い保険商品に加入する個人年金保険の種類によって解約返戻金の返戻率は異なります。支払った保険料に対して、返戻率の高い保険商品に加入するのが1つの方法です。一般的に返戻率の高い保険商品は「変額保険」と「外貨建て保険」の2種類です。変額保険とは保険料を株式や債券などの伝統的資産で運用することで、運用実績によって保険金や解約返戻金が増減する保険です。投資による運用なので経済の影響を受けて、経済が好調であれば解約返戻金が高くなる可能性がある一方で、経済危機などにより株式や債権が暴落すれば、解約返戻金の金額が低くなります。このように解約返戻金が増減し、場合によっては大きな損失が生じるので、特性を十分に理解した上で加入しましょう。変額保険には2種類あり、保険期間が一定の「有期型」と、保険期間が生涯継続する「終身型」があります。外貨建て保険は日本円ではなく、米ドルなどの「外貨」で保険料を払込み、運用する保険です。外貨で保険料を払い込むだけではなく、保険金や解約返戻金の受取も外貨で行われます。為替の変動によって、為替が円安に動けば受け取る解約返戻金の金額が大きくなりますが、円高に動いた場合には解約返戻金の金額が少なくなります。変額保険同様に解約返戻金が増減し、場合によっては大きな損失が生じるので、特性を十分に理解した上で加入しましょう。 ②払込期間を短くする払込期間を短くするのも、より多くの解約返戻金を受け取るための方法の1つです。保険料払込期間を短く設定することで、多くの解約返戻金を受け取れる可能性が高くなります。終身保険ではなく、保険料払込期間を60歳に設定すれば、払込終了後は既に支払った保険料以上の解約返戻金を受け取れるのが一般的です。一方で、保険料払込期間を短くすることによって、その分だけ毎月の支払い保険料が高くなるので、日々の生活とのバランスを考えながら期間を設定することが重要です。 ③早い時期に加入するほとんどの生命保険では加入期間が長くなるほど返戻率が高くなり、受け取る解約返戻金の金額が大きくなります。解約返戻金を多く受け取るためには、早い時期から保険に加入して払込期間を長くすることが考えられます。一方で、早い時期に途中解約してしまうと、加入期間が短くなり、既に支払った保険料の総額に対して解約返戻金の金額が少なくなり、損をする可能性が高くなります。 個人年金保険を解約せずに継続する方法個人年金保険の保険料の払い込みが困難になっても、途中解約せずに保険契約を継続する方法があります。保険料を支払いながら保障を続けるには、「自動振替貸付」や「払済保険」「契約者貸付」といった方法があります。 ①自動振替貸付により一時的に保険料の支払いを止める保険料の支払いが滞ったまま一定の猶予期間を経過すると契約の効力が失われてしまいます。しかし、「自動振替貸付」が適用されると、保険契約が失効せずに、継続します。自動振替貸付とは解約返戻金の範囲内で保険会社が保険料を自動で立て替えてくれる制度です。しかし、あくまで「貸付」ですので、立て替えもらった金額を返済するまでは利息が付きます。 ②払済保険にして保険を一部だけ残す現在加入している保険を有効的に継続させる方法として払済保険があります。これは保険料の払込を中止して、今までの解約返戻金をもとに、保険期間をそのままにして補償額の少ない保険(同じ種類の保険かまたは養老保険・終身保険)に変更する方法です。例えば、保険期間はそのままで、2,000万円の保障額が少ない額に変更されるというイメージです。なお、払込保険に変更すると特約は消滅します。当初予定していた保険期間が維持されるので、保険期間を重視している人におすすめです。 ③契約者貸付でお金を借りて保険を残す契約者貸付は解約返戻金の範囲内で生命保険会社からお金を借りる方法です。契約者貸付を利用した場合には保険の解約をせずに契約している保険を担保としてお金を借りられます。保険料の支払いが困難になり、どうしても資金が必要で、保険を解約して、解約返戻金を使う以外に方法がない場合に有効な制度です。通常、資金が必要なために解約返戻金をあてにして保険を解約すると保障がなくなってしまい、その後に保険に再加入する場合には年齢に比例して保険料が上がってしまいます。また、健康状態によっては保険に加入できなくなるので、出来ることなら保険は解約しないのがベストです。したがって、契約者貸付で個人年金保険を解約せずにお金を借りられるのは有効な制度だと言えます。「貸付」ですので、銀行からの借入同様に利息が発生します。利息は保険の種類や各生命保険会社によって異なりますが、2~6%であることが多く、銀行金利より高く、カードローンより低いくらいです。 個人年金保険の解約に必要な書類・手続き一般的な解約手順として、まず生命保険会社のカスタマーセンターに連絡をして解約をしたい旨を伝えます。その際に契約番号と解約の理由について聞かれることがあります。生命保険会社より解約請求書等の手続き書類一式が郵送されるので、所定の書類に必要事項を記入して、生命保険会社宛に郵送します。詳しい必要書類は生命保険会社や契約内容によって異なりますので、必ず契約している生命保険会社に問い合わせをしましょう。また、生命保険会社によっては24時間対応しているウェブサービス上で解約の手続きをすることが出来る場合があります。注意点として、解約をすると以前と同じ条件で保険に加入が出来なかったり、切り替えることで結果的に損失に繋がってしまうことも往々にしてあります。解約を検討される際には専門家としっかり話し合ったうえで手続きを進めましょう。 まとめ個人年金保険は満期まで継続することが前提なので、途中解約してしまうとたいていの場合は元本割れをしてしまいます。 老後の資金に備えるために加入するタイプの保険ですので、できれば解約せずに保険を継続する方法を考えたいものです。金銭的に損をする金額を最小限にするために自動振替貸付、契約者貸付、払済保険などの利用を検討することをおすすめします。一方で、個人年金保険の解約については経験がないと不安な方も多いかと思います。解約に際して、不安に感じることがある場合には保険のプロに相談しましょう。「まずは気軽に保険のことを相談してみたい!」という方にお勧めなのが、Moneypediaのオンライン保険相談サービスです。保険のことをいつでも・どこでも・気軽に・何度でも専門家に相談することが出来ます。まずは一度、下記リンクからご相談されてみてはいかがでしょうか。Moneypediaのオンライン保険相談サービスいつでも・どこでも・気軽に・何度でも専門家に相談