本記事では、外貨建て保険に加入する際に考慮すべき【損益分岐点】について専門家が、詳しく解説しています。損益分岐点の概要から計算方法までを知ることで、ご自身に適した外貨建て保険を選ぶ一助になるでしょう。外貨建て保険の損益分岐点を把握!外貨建て保険は、高い金利が見込まれる外国債券で運用をしているため、割安な保険料で多くの保険金を受け取れる可能性があります。現在、日本の金利は歴史上最低水準である0%付近を推移しており、日本の金利と比較して世界各国の債券の金利は、高い水準になっています。そんな背景もあり、米ドル建てや豪ドル建ての外貨建て保険が人気となっています。しかし、外貨建て保険は高金利高利回りかつ貯蓄性の高い生命保険として魅力的な一方、外貨で運用を行うため、為替変動リスクが生じます。外貨建て保険は、基本的に保険料も保険金額も米ドルベースでの支払いになるため、日本円で換算すると変動します。つまり、保険料の支払いは円高時が割安になり、保険金の受取時は円安の方が金額は大きくなります。その逆で、支払いが円安だと保険料も割高になり、保険金の受取時は円高の方が金額は少なくなります。このような為替変動リスクを理解していないと、解約返戻金が累計払込保険料よりも下回るという事象が起きることもあります。そのため外貨建て保険において、為替を加味した損益分岐点を把握することが必要不可欠となります。ということで、損益分岐点の計算方法と為替変動リスクを解説していきたいと思います。まずは為替変動リスクを考えよう!外貨建て保険において、為替変動リスクは必ずついてくるものです。では為替レートが変動すると、支払う保険料や受け取る保険金にどれくらいの影響があるのかを実際に考えていきましょう!たとえば、死亡保険金10万米ドル(約1000万円)毎月の保険料100米ドル(約1万円)という保険に加入した場合を考えていきましょう。支払う保険料は、1ドルが80円の時は、100ドル×80円=8,000円ですが、1ドル120円になると100ドル×120円=12,000円になります。1ドル80円の時と比べ、支払保険料が4,000円も多く支払わなければなりません。では、死亡保険金で考えてみると、1ドル80円の時に亡くなられた場合は、100,000ドル×80円=800万ですが、1ドル120円の場合だと100,000ドル×120=1,200万円となり、400万円もの大きな差が生じてくるのです。このように円高ドル安・円安ドル高の為替レートが、保険料の支払い時や、死亡保険金の受取時のメリット・デメリットに影響することになります。この変動リスクを加味した上で、損益分岐点を算出していきましょう! そもそも損益分岐点ってなに?では、為替変動リスクもご理解いただいた上で損益分岐点を算出していく前に「損益分岐点ってなに???」となる方もいると思うので損益分岐点の解説をしていきます。企業経営において、売上高と費用が等しくなり、損益がゼロとなるときの売上高のことをいいます。売上高が損益分岐点を上回れば利益となり、逆に損益分岐点を下回れば損失となります。外貨建て保険に当てはめていくと、売上高と費用が保険では受け取る保険金と支払う保険料になります。外貨建て保険を契約される場合は、為替レートがどのくらいで損になるのかどうかの損益分岐点になる為替レートの目処をつけておくといいでしょう。 損益分岐点の算出方法ここまでお話した、為替レートと外貨建て保険の利率を加味して考えていきましょう。損益分岐点の計算式損益分岐点レート=投資時の円建ての元本÷満期時外貨建て受取額円建ての元本100万円を1ドル120円でドルに換え、3%の金利で1年間運用した場合の損益分岐点である為替レートを計算してみます。※ここでは税金は考慮せず計算していきます。元本:100万円÷120円(TTS)=8,333.33ドル満期時の受取額:8,333.33ドル×103%=8,583.33ドル損益分岐点レート:100万円÷8,583.33ドル=116.50円上記の場合の損益分岐点になる為替レートは116.50円となります。このレートにさらに為替手数料がかかります。円を外貨に換える際に使用されるレートをTTS、外貨を円に換える際に使用されるレートをTTBといい、TTSとTTBの差が為替手数料として差し引きされているのです。この為替手数料を50銭とすると、117.00円が実質の損益分岐点になる為替レートということになります。 実質利回りを求めようここまで損益分岐点の算出方法について考えてきましたが、上記の算出方法は概算的なものになり、厳密にいうと実質の利回りではありません。そのため、実質利回りを求めることが必要になってきます。実質利回りとは、支払保険料の運用手数料(為替手数料、付加保険料)の差し引きを考慮した積立利率のことです。計算式に加味しなかったのは、運用手数料は保険会社ごとに異なり、年単位でも変動するため正確な損益分岐点を計算するのは非常に難しいためです。また、保険金を受け取る際には税金もかかってきます。税金の区別は、誰が保険料を支払い、誰がどのように保険金を受け取るのかによって、税目も変わってくるのでそのあたりも知識の一つとして持っておくこともいいでしょう。 外貨建て保険の受け取りは税金に注意ここからは、保険金を受け取った際の税金について解説します。外貨建て保険の課税は、円建て保険と同じです。外貨だからと言って異なる点はありません。誰が保険料を支払い、誰がどのように保険金を受け取るのかによって、確定申告上の所得区分が変わり、税目が変わります。<例:死亡保険金を受け取る際の税目>契約者=受取人・・・・・・・・所得税契約者=被保険者・・・・・・・相続税契約者≠被保険者≠受取人・・・贈与税また、受け取り方によって、所得区分が変わってきます。一時所得、雑所得、贈与税保険金受け取りの際の課税は、保険料を誰が支払うのか?保険金を誰がどのように受け取るのか?以上によって、所得区分や税目が変わると上述しました。保険料を負担する契約者と保険金の受取人が同一人の場合、所得税が課税されます。また、契約者が被保険者でも受取人でもない場合は、贈与税が課税されます。なぜ贈与税なのか。その理由は、保険料という資産を保険として、第三者に贈与したと見なされるためです。また、以下のように受け取り方によって、所得区分が変わってきます。一時金として受け取る場合は一時所得、年金として受け取る場合は雑所得となります。一時所得と雑所得では、課税対象額の計算方法が異なります。一時所得には「特別控除」があり、雑所得には特別控除がないというのが大きな違いです。為替差益は課税対象?外貨建て保険の受け取りの際、為替差益が発生します。この為替差益は「雑所得」として税金を支払う必要があります。しかし、個別で支払いが必要なわけではなく、受け取り時の為替差益は運用益と一緒に課税されます。一時金として受け取る場合は一時所得、年金として受け取る場合は、雑所得となります。 まとめここまで、外貨建て保険に加入する際に考慮すべき【損益分岐点】について解説しました。外貨建て保険には資産形成や保障にとって大きなメリットがある一方、為替レートや手数料、課税も考慮したうえでご自身に最適な保険商品を選択することが重要と言えます。数多くの保険会社から外貨建て保険が販売されている中で、最適な保険商品を探すことは多くの時間と労力を要するので、保険のプロであるFPに相談をしながら選択していくことをお勧めいたします。