個人年金保険料控除とは個人年金保険料控除とは、生命保険料控除区分の1つで、一定の条件を満たす個人年金保険に加入している人が受けることのできる制度です。保険料を支払っている人の収入から、年間で支払った保険料の一定額が差し引かれることにより、所得税や住民税を軽減できる制度のことです。生命保険料控除には、他に「一般生命保険料控除」と「介護医療保険料控除」があり、年末調整や確定申告で申告することにより、控除を受けることが可能です。 まずは節税効果をシミュレーションまずは、気になる節税効果をご紹介します。「契約年齢25歳・月払い保険料15,000円・払込期間60歳まで」の個人年金に加入した場合年間支払い保険料:180,000円所得税の保険料控除額:40,000円住民税の保険料控除額:28,000円この方の所得税率が10%・住民税率が10%だった場合所得税の節税効果:40,000×10%=4,000円住民税の節税効果:2,8000×10%=2,800円年間で合計6,800円になります。ちなみに、年間保険料に対する節税効果の割合は3.7%であり、見方によっては3.7%の利息がつくようにも考えられます。このように、個人年金保険は老後の生活資金確保や貯蓄ができると同時に、節税効果も高いのです。 控除額の計算方法と上限では、上記の保険料控除額はどのように算出されたのでしょうか?この章では、個人年金保険控除額の計算方法と上限についてご紹介します。まず、前提として知っておきたいことがあります。それは、生命保険料控除には新制度と旧制度の2つがあるということです。2012年1月1日以降に保険契約を締結したもの:新制度2011年12月31日以前に保険契約を締結したもの:旧制度に区分されます。ただし、長期に渡って加入しており、新制度と旧制度の両方に該当する保険は、控除額が大きい方、もしくは、新制度と旧制度の控除額を合算して適用することが可能です。 所得税の控除額と上限所得税の個人年金保険控除額と上限は下記の通りです。■新制度(2012年1月1日以降)の個人年金保険の控除額年間支払い保険料控除額20,000円以下年間支払い保険料額全額20,001円~40,000円(年間支払い保険料額×0.5)+10,000円40,001円~80,000円(年間支払い保険料額×0.25)+20,000円80,001円以上一律40,000円上記の内容は個人年金保険料控除だけでなく、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除にも共通している内容になります。そのため、新制度の所得税の控除限度額は4万円×3=12万円になります。■旧制度(2011年12月31日以前)の個人年金保険の控除額年間支払い保険料控除額25,000円以下年間支払い保険料額全額25,001円~50,000円(年間支払い保険料額×0.5)+12,500円50,001円~100,000円(年間支払い保険料額×0.25)+25,000円100,001円以上一律50,000円一見、旧制度の方が控除額が大きいと感じますが、旧制度には、介護医療保険料控除がありません。そのため、旧制度の所得税の控除限度額は5万円×2=10万円になります。新制度と旧制度の両方に該当する方は、それぞれの控除額を計算し、合算、もしくは額の大きい方を申告することができます。 住民税の所得額と上限住民税の個人年金保険控除額と上限は下記の通りです。■新制度(2012年1月1日以降)の個人年金保険の控除額年間支払い保険料控除額12,000円以下年間支払い保険料額全額12,001円~32,000円(年間支払い保険料額×0.5)+6,000円32,001円~56,000円(年間支払い保険料額×0.25)+14,000円56,001円以上一律28,000円住民税の場合注意点が1つあり、年間保険料を56,001円以上支払っている場合です。この場合の生命保険料控除全体の限度額は70,000円になり、28,000円×3=84,000円にはならないので、注意しましょう。■旧制度(2011年12月31日以前)の個人年金保険の控除額年間支払い保険料控除額15,000円以下年間支払い保険料額全額15,001円~40,000円(年間支払い保険料額×0.5)+7,500円40,001円~70,000円(年間支払い保険料額×0.25)+17,500円70,001円以上一律35,000円旧制度は、所得税と同様に、一般生命保険料控除と個人年金保険料控除の2つの枠なので、住民税の控除限度額は、35,000円×2=70,000円になります。 個人年金保険料控除を利用するメリット個人年金保険料控除を利用するメリットは、既に生命保険に複数加入している場合でも控除が利用できる可能性が高いところです。医療保険や生命保険で控除限度額に達していた場合でも、個人年金保険は別枠で控除が可能なため、さらに節税効果を高めることができるのです。ちなみに、生命保険料控除は下記のように分類されます。一般生命保険料控除学資保険・養老保険・死亡保険(定期保険や終身保険など)介護医療保険料控除医療保険・がん保険・介護保険など個人年金保険料控除税制適格特約が付加されている個人年金保険節税効果を高めるには、上記の3つの枠それぞれで控除を受けることがポイントです。 個人年金保険料控除を利用する際の注意点個人年金保険料控除の詳細を理解したところで、注意点や対処法を確認していきましょう。 個人年金保険の特徴と注意点そもそも個人年金とはそもそも「個人年金」とはどのような意味なのでしょう。日本には、日本年金機構が運営する「国民年金」制度があります。20歳以上から国民年金への加入と保険料納付が義務付けられ、納付された保険料や期間により将来受け取れる年金額が決まります。一方、「個人年金保険」とは、保険会社が販売する貯蓄型の保険のことです。仕組みは国民年金と似ており、若いうちに積み立てた資金を保険会社が運用し、定められた年齢になると年金として受け取れる保険です。なぜ、個人年金保険が販売されているかというと、国民年金などの公的年金だけでは老後の生活資金が不足する可能性が高いからです。国で補助できることには限界があるため、「自助努力をしてください。してくれた方には節税効果を与えます」というのが、個人年金保険控除が存在する理由とも考えられるでしょう。個人年金保険に加入する際には下記のことに注意しましょう。個人年金加入の際の注意点■途中解約すると元本割れする可能性が高い個人年金保険は長期に渡り積立をしていく保険です。中には、突発的な事情で解約を検討することもあるかもしれません。しかし、個人年金保険を途中解約すると、元本割れしてしまう可能性が高いので注意が必要です。元本割れとは、支払った保険料より受け取る金額が少ないことを意味します。個人年金保険は、一定期間経過後に少しずつ解約返戻金が支払い済保険料を上回っていく仕組みのため、途中解約は元本割れのリスクが非常に高いのです。 ■年金受取時に税金がかかる可能性がある個人年金は、将来、年金を受け取る際に税金がかかる可能性があります。契約者と受取人が同一人物の場合は雑所得となり「所得税」の対象、契約者と受取人が別人の場合は「贈与税」の対象になります。それぞれ、年金以外の所得と合算して計算するため、他の所得額が多い場合は税金が課税される可能性もあります。また、パートをしている主婦などが年金を受け取ったことにより扶養から外れてしまう可能性もあるので、注意が必要です。■個人年金保険料税制適格特約を付加することにより、一部、制限が生じる個人年金保険料税制適格特約とは、個人年金保険に付加できる特約の1つで、この特約を付加することにより生命保険料控除の対象になります。節税対策としては付加することをおすすめしたいのですが、一方で、付加することにより制限される内容も生じます。(詳細は「税制適格特約がもたらす制限」で解説しています) 注意点を踏まえた対処法注意点を踏まえた対処法としては以下が挙げられます。途中解約リスクを減らすため、無理のない保険料を設定する加入前に受取時の税金について理解する減額や払い済のリスクを減らす複数の個人年金保険に加入する場合は「税制適格特約」を付加するのは1つだけにするまずは、解約リスクを減らすために無理のない保険料を設定することが重要です。もし契約後に、支払いに余裕がある場合は、さらに別の個人年金保険に加入することを検討しましょう。その際、1つの個人年金保険で生命保険料控除の上限に達する保険料を支払っている場合は、2つ目の保険には税制適格特約は付加しないことをおすすめします。また、加入前に、受取時の税金についてある程度理解することも重要です。一般的に、贈与税は所得税より課税されやすい傾向があるので、特別な事情がない限りは、契約者と受取人を同一人物にすることをおすすめします。 個人年金保険料控除の対象となる個人年金保険とは実は、個人年金保険料控除は全ての個人年金が対象ではありません。個人年金保険料控除を受けるには、一定の条件を満たす必要があります。 個人年金保険料控除の対象となる要件個人年金保険料控除の対象となる要件は「個人年金保険料税制適格特約」することです。個人年金保険料税制適格特約を付加するには、下記の4点全てを満たす必要があります。受取人が契約者もしくは契約者の配偶者である受取人が被保険者である年金支払い開始年齢が60歳以上である年金受取期間が10年以上ある上記の4点全てを満たし、「個人年金保険料税制適格特約」を付加することで、個人年金保険料控除の対象になるのです。そのため、保険料を一度に支払う「一時払い個人年金」や、払込期間を5年など短期間にした場合は個人年金保険料控除は使えません。また、保険会社の運用実績により受取額が変更する「変額個人年金保険」は、個人年金保険料控除ではなく「一般生命保険料控除」の対象になります。 該当する個人年金保険商品の例個人年金保険料控除の対象となる個人年金保険は、定額タイプの個人年金保険です。加入時に、保険料と受取額が確定され、払込期間中は一定額の保険料を支払っていくタイプです。現在、販売されている個人年金は受取期間が有期タイプの商品がほとんどで、期間は10年が一般的です。そのため、新しく加入する個人年金保険は短期払いを除けば、ほぼ個人年金保険料控除の対象となる商品でしょう。 個人年金保険の加入に向いている人ここまでご紹介した個人年金保険の特徴を踏まえると、個人年金保険の加入に向いているのは下記のような方です。60歳前後まで安定した収入が見込める人保険料を支払っても生活に余裕がある人ローリスクローリターンでも確実に貯蓄をしたい人若いうちに老後の資金を貯めたい人上記に該当する方は、個人年金保険への加入をおすすめします。 個人年金保険料税制適格特約とは先ほどから何度も登場する「個人年金保険料税制適格特約」とはどのようなことなのでしょうか?個人年金保険料税制適格特約とは、個人年金に付加することができる特約の1つで、個人年金保険料税制適格特約を付加することにより、個人年金保険料控除を使うことができる特約です。つまり、個人年金保険とは個人年金保険料税制適格特約を付加→個人年金保険控除の対象個人年金保険料税制適格特約を付加しない→一般生命保険料控除の対象と特約の付加により、生命保険料控除の枠が変わるのです。また、医療特約を付加した個人年金の場合は「介護医療保険料控除」の対象となる場合もあるので、加入時に確認が必要です。 税制適格特約がもたらす制限節税対策のためには付加したい税制適格特約ですが、付加することで下記のような制限が生じます。減額した場合、解約返戻金はその時に支払われず将来受け取る年金の増額に充当される契約から10年以内は払済保険にできない税制適格特約のみを解約することはできない受取人の変更など、個人年金保険料控除の条件を満たさないような内容の変更はできない注意したいのは、減額や払済保険にしたい場合です。貯蓄系の保険商品を解約した場合、通常は減額した部分に対する解約返戻金が支払われます。しかし、税制適格特約を付加している場合の解約返戻金は、保険会社が運用し続け将来受け取る年金の増額に充当されます。また、保険料の支払いを停止しそこまでの保障を持ち続けることのできる払済保険にしたい場合、契約から10年未満は対応できません。受取人変更の際も注意が必要で、「受取人が契約者もしくは契約者の配偶者である」「受取人が被保険者である」この2点を満たさない受取人への変更はできないので、注意が必要です。 個人年金保険料控除の申告方法生命保険料控除を受けるには、自分から申請する必要があります。この章では、申告の方法をご紹介します。会社員の方は年末調整で、個人事業主の方は確定申告で申告することになります。 生命保険料控除証明書とは年末調整、確定申告共に必要になる書類が「生命保険料控除証明書」です。加入している保険会社からハガキや書類で毎年10月頃に送られてくるので、なくさないように注意しましょう。万一、紛失してしまった場合は再発行が可能なので、早目に保険会社に連絡する必要があります。生命保険料控除証明書には、加入している保険の名称や受取人、年間支払保険料などが記載されているので、その情報を元に、申告書を記入していきます。 まとめこの記事では、個人年金保険料控除について解説してきました。重要なポイントを再確認しておきましょう。個人年金保険料控除は、生命保険料控除の1つ個人年金保険料控除を利用すると、所得税上は最大4万円(旧制度は5万円)・住民税上は最大2.8万円(旧制度は3.5万円)を契約者の収入から控除できる個人年金保険料控除は、個人年金保険料税制適格特約を付加した個人年金に加入している人が利用できる個人年金保険料税制適格特約を付加するには、年金開始年齢60歳以上・受取期間10年以上など、一定の条件を満たす必要がある個人年金保険料税制適格特約を付加すると、一定の制限が生じる確定申告や年末調整で申告することで、個人年金保険料控除が利用できる税金関係の申請は、普段あまり関わりのない方には難しいと感じることも多いでしょう。そのような場合は、保険のプロに相談することをおすすめします。保険のプロはお金のプロでもあるので、国の制度や税金にも詳しい方が多いのです。保険のプロに相談することで、「子供の教育資金や老後資金の確保など、お金の悩みが解決した」という方も多くいます。ぜひ、この機会に相談してみましょう!「まずは気軽に保険のことを相談してみたい!」という方にお勧めなのが、MoneypediaのオンラインFP相談サービスです。保険のことをいつでも・どこでも・気軽に・何度でも専門家に相談することが出来ます。まずは一度、下記リンクからご相談されてみてはいかがでしょうか。