個人年金保険をおすすめしない7つの理由個人年金保険は、国民年金や厚生年金にプラスして老後の資金を蓄えられる保険商品です。しかし、個人年金保険に関する情報を見ると、おすすめしないという意見もよく見られます。個人年金保険は、なぜおすすめしないといわれているのでしょうか?その理由はさまざまですが、主な理由としては低金利政策やインフレリスクを始めとする、以下の7つが挙げられます。日銀が低金利政策を実施しているインフレの影響を受けやすい金利が固定される節税効果が低い途中解約による元本リスクが生じる保険会社の破綻リスクも被る受取金に課税が生じる個人年金保険に加入する際は、これらのおすすめしない理由を踏まえたうえで判断することが大切です。この章では、これらのおすすめしない理由を1つずつ解説します。 ①日銀が低金利政策を実施している現在日本ではデフレと不景気の脱却のために、日銀による低金利政策が実施されており、結果として国債の金利も低金利で推移しています。個人年金保険は預けた資産を保険会社が運用しますが、運用にはもちろん国債も活用されます。ですから国債の金利が低いと、個人年金保険の運用も難しくなってきます。実際、昔に比べると個人年金保険の利率は非常に低くなっており、長年かけて積み立てても5%程度しか運用益が得られないことが多くなっています。低金利政策の影響で高い運用益が得られないことは、個人年金保険をおすすめしない理由の一つです。 ②インフレの影響を受けやすい予定利率が定められていて最終的に受け取れる額が決まっている定額個人年金保険の場合、将来のインフレリスクを考慮できないという欠点があり、これも個人年金をおすすめしない理由の一つとなっています。ただし、一般的に保険料は毎月払うものなので、加入した時点と年金を受け取る時点の貨幣価値の差がそのまま影響するわけではありません。一方で、一時払いで最初にまとめて保険料を支払った場合は、毎月支払う場合よりインフレの影響を受けやすくなります。変額個人年金保険もインフレリスクがありますが、変額の場合はインフレによる金利上昇によって運用成績が上がることもあるので、定額個人年金保険よりはインフレリスクに対応しやすいといわれています。 ③金利が固定される定額個人年金保険では金利が固定されるため、将来金利が上がってもその恩恵を受けられないリスクがあります。これも個人年金保険をおすすめしない理由の一つです。特に現在は金利が非常に低い状態が続いているので、将来金利が上がる可能性はあっても、ここからもっと下がる可能性は低いです。個人年金保険を資産運用ととらえるなら、今は入らない方がいいといえるでしょう。もちろん変額個人年金保険なら、金利が固定されるリスクを負う必要はありません。ただし、変額個人年金保険は元本割れなど他のリスクがあるので、メリットばかりというわけではないのが注意点です。 ④節税効果が低い個人年金保険で支払った掛金は控除の対象となりますが、控除額は最大で68,000円までとなっており、全額控除されるiDeCoなどと比べると節税効果が低くなっています。最大68,000円というのはあくまで控除額であって、例えばあなたの所得税率が20%なら節税効果は年間13,,600円となります。もし30年間加入したら、合計の節税効果は408,000円です。40万円の節税というと効果が高く見えますが、30年加入してもせいぜい40万円程度の効果しかないともいえます。節税を主な目的とするなら、全額控除のiDeCoに加入したり、国民年金基金や小規模企業共済に加入したほうがよいでしょう。 ⑤途中解約による元本リスクが生じる定額個人年金保険はもらえる年金額が元本割れすることはありませんが、途中解約した時の解約返戻金が保険料総額を下回るリスクがあります。定額個人年金保険の解約返戻率は、加入期間が長いほど高くなります。しかし、100%を上回るには2,30年ほどかかるのが一般的で、基本的に途中解約は元本を下回ると思っておいたほうがよいです。特に、加入後すぐ解約した場合は返戻率が50%程度しかないこともあるので、途中で解約する可能性があるなら個人年金保険は入らない方がいいでしょう。 ⑥保険会社の破綻リスクも被る個人年金保険は長ければ30年くらいに渡って積み立てるものなので、その間に保険会社自体が破綻してしまうケースもあります。ここ10年ほどは保険会社が破綻した事例はありませんが、バブル崩壊後の2000年前後には、いくつかの大手生命保険会社が実際に破綻しました。保険会社が破綻しても保険契約自体は保護されますが、ほとんどの場合受け取れる年金額が減るなどの不利益を被ります。ただし、2000年前後に破綻した生命保険会社は、バブル崩壊の影響を受けたものがほとんどです。バブル期に高金利の個人年金保険を販売し、その保険金が払えなくなって破綻していきました。一方、現在は個人年金保険の金利が低くなっているので、2000年頃のようにいくつもの保険会社が次々に破綻する可能性は低いと考えられます。 ⑦受取金に課税が生じる個人年金保険で受け取った年金は雑所得として扱われ、所得税や住民税の課税対象となります。また、契約者と受取人が違う場合は贈与税が課せられます。iDeCoなどでも課税は生じますが、受取金に対して税制の優遇措置がとられています。受取金の課税という面で個人年金保険は不利であり、これもおすすめしない理由の一つとなっています。個人年金保険のメリット・デメリット前章で見たように、個人年金保険にはおすすめしない理由がいくつかあります。しかし、もちろんデメリットしかないわけではなく、適切に活用すればメリットを得ることができます。個人年金保険の加入を検討する際は、入るなといわれる理由だけでなく、メリットも考慮することが大切です。そこでこの章では、個人年金保険に加入するメリットとデメリットを解説し、個人年金保険の加入をおすすめできる人とおすすめしない人について検討します。 個人年金保険に加入するメリット個人年金保険に加入するメリットとしては、ローリスクで老後の資産を貯められる、多少は節税効果があるなどの点が挙げられます。定額個人年金保険は元本が保証されているので、ローリスクで老後の資金を貯めるとともに、少しではありますが資産を増やすこともできます。変額個人年金保険や外貨建ての個人年金保険では、元本割れのリスクや為替リスクがあります。しかしその分大きなリターンが期待できますし、自分で個別株を買うのに比べると、保険会社が運用してくれる安心感があります。個人年金保険の節税効果はあまり高くありませんが、少しでも節税効果を得たい場合や、他の年金ですでに節税をしている人がもっと節税したい場合なら加入するメリットはあります。個人年金保険は毎月積み立てる貯蓄性のある商品なので、定期預金のような感覚で貯金代わりに使えるのもメリットです。個人年金保険は途中で解約すると損をすることが多いので、貯金が苦手ですぐおろしてしまう性格の人なら、簡単におろせないお金を確保できます。もし自分が老後に入る前に死亡してしまった場合は、死亡給付金という形で遺された家族の生活をまかなえるのもメリットです。【個人年金保険に加入するメリット】ローリスクで老後の資産を貯められる多少は節税効果がある貯金代わりに利用することもできる老後の備えをしつつ死亡給付金も得られる 個人年金保険への加入をおすすめする人個人年金保険はおすすめしないという意見も多いですが、例えば貯金が苦手な人や資産運用について詳しくない人は、個人年金保険への加入をおすすめできるといえます。貯金が苦手な人は定期預金を利用することが多いですが、定期預金の預入期間は長くても10年程度なので、老後が来る前に満期が来て、結局解約して使ってしまう可能性もあります。さらに、満期後も継続して老後まで定期預金を続けたとしても、年金や死亡保険金を受け取れるわけではありません。そう考えると、貯金代わりとして使えて老後の備えにもなる個人年金保険は、それなりにメリットがあるといえます。また、資産運用に興味があるが詳しいことは分からない人にとっては、個人年金保険は有力な選択肢となります。毎月保険料を支払うだけで保険会社が代わりに運用してくれますし、定額個人年金保険なら元本も保証されます。【個人年金保険への加入をおすすめする人】貯金が苦手な人資産運用について詳しくない人 個人年金保険に加入するデメリット個人年金保険に加入するデメリットは、前章で解説したおすすめしない7つの理由に集約できます。個人年金保険を検討する際は、インフレリスクや節税効果の低さといったマイナス面を考慮しましょう。 個人年金保険への加入をおすすめしない人個人年金保険は、老後に備えてコツコツ積み立てて、老後に年金と運用益を受け取る商品です。あくまで老後の生活資金の確保が目的であり、運用益は副次的なものだといえます。ですから、積極的に資産運用して運用益を得たい人にとっては、個人年金保険は効率の悪い投資方法なのでおすすめできません。また、途中で解約する可能性がある人は損をするかもしれないので、こちらもおすすめはできません。 個人年金保険のみでの老後資金の準備はおすすめしない個人年金保険は公的年金にプラスして老後に備える商品として有用ではありますが、前章で解説したおすすめしない理由を踏まえると、これだけで老後資金の準備をするのは得策とはいえません。老後の備えを万全にしたい場合は、個人年金保険以外の方法も組み合わせて、複数の方法を活用したほうがよいでしょう。複数の方法を使う場合は、個人年金保険のデメリットを補える方法を選ぶことが重要です。例えば、インフレリスクに強い方法や金利が固定されない方法を併用すれば、個人年金保険のデメリットを軽減できます。また、たとえ個人年金保険と同じようなデメリットを持つ方法であっても、複数の方法に分散して投資することは、それだけで破綻による元本割れリスクなどを軽減できます。 個人年金保険以外の老後資金の準備方法6選前章で個人年金保険のみでの老後資金の準備はおすすめしないと解説しましたが、では個人年金保険以外の老後資金の準備方法にはどのようなものがあるのでしょうか。老後資金は着実に準備したいので、あまりリスクの高い投資方法を選ぶべきではないでしょう。基本的には元本保証があるもの、または保証がなくても低リスクなものを選ぶべきです。このような観点から考えると、個人年金保険以外の老後資金の準備方法としては、国債やiDeCoなど、下に挙げた6つの選択肢が有力になります。この章では、これら6つの老後資金の準備方法について、特徴や注意点などを解説していきます。 ①個人向け国債・地方債国債は元本が保証されて金利もつくので、個人年金保険以外の老後資金の準備方法として有力だといえます。買ってから1年たてばいつでも換金でき、解約返戻金と違って元本保証されるのもメリットです。ただし途中で換金した場合は、満期まで保有した場合に比べてもらえる利子が減るのが注意点です。現在国債の金利は非常に低いですが、個人向け国債は最低金利0.05%が保証されているので、銀行に貯金するよりは資産を増やすことができます。ただし、仮に1,000万円国債を買っても、0.05%なら得られる金利は年5,000円です。これを銀行預金より得だとみなすか、5,000円程度なら買っても意味ないとみなすかは人それぞれだと思います。地方自治体が発行する地方債も、銀行や証券会社などで購入することができます。地方債は国債に比べるとマイナーですが、もし国債より利回りのいい地方債があるなら、買ってみるのも一つの手です。 ②iDeCo(個人型確定拠出年金)iDeCo(イデコ)とは「個人型確定拠出年金」のことで、国や保険会社に任せるのではなく、自分で運用方法を選ぶタイプの年金です。国民年金や厚生年金に、さらにプラスする形で利用することができます。iDeCoは運用方法を自分で選ぶので、個人年金保険よりハイリスク・ハイリターンな運用もできますし、逆に手堅く運用することもできます。投資信託について一定の知識があり、資産を増やせる投資商品を自分で選べる力があるなら、個人年金保険よりiDeCoのほうが有利になる可能性があります。iDeCoは税制面でも優遇されており、掛金が全額控除されるなど、個人年金保険より高い節税効果が得られます。運用益が非課税なのも大きなメリットです。ただし、iDeCoは個人年金保険と違って途中解約できないので、途中で解約する可能性がある人は入らない方がいいでしょう。 ③NISA株式や投資信託を使って積極的な運用をしたい方は、「NISA」を活用するのがおすすめです。NISAとは株式や投資信託の配当や譲渡益を非課税にできる制度で、通常は約20%かかる税金を納める必要がなくなります。ただし、NISAには非課税の上限枠があるので、老後のための資産運用として使う場合は、あくまで副次的に活用していくことになるでしょう。また、NISAは株式や投資信託のための制度なので、元本保証のある手堅い運用に使うことはできません。 ④不動産投資不動産投資は最近は一般にも浸透してきており、サラリーマンが副業として始めたり、老後資金の準備方法として活用する人も増えています。優良な物件を買って安定した家賃収入が得られれば、年金と同じような感覚で活用することができます。もちろん、家賃収入は必ず毎月得られるとは限らないので、個人年金保険に比べると不確定要素の高い投資方法ではあります。しかし、最近は公的年金が将来ちゃんともらえるか不安に思っている人が多く、自分で老後資金を得る手段として不動産投資を選ぶ人が増えています。不動産投資は、不動産の購入資金としてある程度まとまったお金が必要なのがネックです。サラリーマンの副業ではローンを組むのが一般的ですが、老後資金のためにローンを組むのはリスクもあります。 ⑤終身保険終身保険は自分の老後資金ではなく、自分が死亡した後の家族の生活費の対策として有効です。自分の家族を受取人にしておけば、自分が死亡した後に家族が保険金を受け取ることができます。終身保険にも解約返戻金がありますが、返礼率が100%を超えるかどうかは、保険の種類や解約の時期にもよります。終身保険は生命保険なので、基本的に自分の老後資金対策のためのものではありません。しかし、払い込み期間終了後に解約返礼率が100%を上回ることもあるので、それを老後の資金とすることもできます。最初は家族のために加入しておいて、後で用途を変更し、解約して自分の老後の生活費に充てることも可能です。ただし、個人年金保険にも死亡給付金はあるので、さらに死亡保障が必要かどうか考える必要があります。 ⑥貯金貯金は金利が非常に低いので資産運用の意味合いは薄いですが、老後資金の準備方法としては当然一つの選択肢となります。貯金は資産を増やすことはほぼできませんが、元本が保証されており貯金した額を確実に老後資金に回すことができます。老後資金用の銀行口座を一つ作り、定期的にお金を積み立てておくのもよいでしょう。個人年金保険は貯金代わりのような感覚で活用することもできますが、もともと貯金ができる性格の人なら、元本割れの可能性もある個人年金保険にあえて入る必要はないともいえます。貯金は公的年金と比べると、一生涯の生活資金を賄えるか分からないのが注意点です。何歳まで長生きしても生活費の心配をしたくないなら、終身型の年金や保険を併用する必要があります。また、定額個人年金保険と同じように、インフレリスクに対応しにくいのもデメリットです。 まとめでは最後に本記事のポイントをまとめます。まず個人年金保険は、以下の7つの理由でおすすめしない、入らない方がいいといわれています。日銀がマイナス金利政策を実施しているインフレの影響を受けやすい金利が固定される節税効果が低い途中解約による元本リスクが生じる保険会社の破綻リスクも被る受取金に課税が生じるしかし、下に挙げたようなメリットもあるので、貯金が苦手な人や資産運用に詳しくない人にはおすすめできます。ローリスクで老後の資産を貯められる多少は節税効果がある貯金代わりに利用することもできる老後の備えをしつつ死亡給付金も得られる逆に、積極的な資産運用をしたい人や、途中で解約する可能性がある人にとってはおすすめしない商品です。老後資金の準備は、個人年金保険と他の方法を組み合わせることが大切です。個人年金保険と組み合わせるのにおすすめの方法には、以下の6つがあります。個人向け国債・地方債iDeCo(個人型確定拠出年金)NISA不動産投資終身保険貯金個人年金保険はおすすめしないという意見もあるので、加入に際して不明点や不安がある方もいるでしょう。その場合は保険のプロに相談してみましょう。個人年金保険に加入すべきかどうかについて、適切なアドバイスを受けられます。「まずは気軽にお金のことを相談してみたい!」という方にお勧めなのが、MoneypediaのオンラインFP相談サービスです。保険のことをいつでも・どこでも・気軽に・何度でも専門家に相談することが出来ます。まずは一度、下記リンクからご相談されてみてはいかがでしょうか。